【三田市監禁事件・完結編】「過去を裁く」だけでは意味がない。報告書が示す、脱・家族責任論への道
【三田市監禁事件・完結編】「過去を裁く」だけでは意味がない。報告書が示す、脱・家族責任論への道
兵庫県三田市で起きた障害者監禁事件について、これまで「行政対応の遅れ」や「家族の孤立」といった視点から解説してきました。
事件の解決とは、犯人を逮捕することではありません。
私たちの社会に根付く「古い価値観」をアップデートすることです。
この記事は、スペシャルラーニングのSL158から抜粋して作成しています。
講師は、元独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園の研究部長であり、特定非営利活動法人PDDサポートセンター グリーンフォーレストの理事長の志賀 利一(しが としかず)先生と関西福祉大学社会福祉学部教授の谷口 泰司(たにぐち たいじ)先生です。

今の価値観で「過去」を裁いても解決しない
20年以上もの間、息子を檻に入れていた両親。そして、それを見過ごした当時の行政。
今の私たちの感覚からすれば、「信じられない」「許せない」と感じるのが当然です。
しかし、谷口教授はこう警鐘を鳴らします。
「今の私たちの価値観で、過去のことを裁いても何も解決しません」
なぜなら、この事件の背景には、当時の日本社会全体が共有していた「負の遺産」があったからです。
それは、「障害のある子は外に出さず、家の中で家族が責任を持って見るべきだ」という空気感です。
個人を責めて終わりにするのではなく、私たち自身がその「過去の価値観」とどう向き合うかが問われています。
家族と本人は「運命共同体」ではない
この報告書が突きつけた最大のテーマは、「脱・家族責任論」です。
日本では長らく、障害のある人とその家族を「運命共同体」として扱ってきました。
「親なんだから我慢しろ」「家族なんだから面倒を見ろ」。
この圧力が、家族を追い詰め、結果として虐待や監禁を生んでしまいました。
谷口教授は、これからのあるべき姿をこう語ります。
「障害のある方自身にご自身の人生があるのと同じように、ご家族にも自分の人生があります」
家族と本人を切り離し、「擁護者(家族)を社会全体で支援する」こと。
家族に全てを押し付けず、福祉サービスや地域が支え手となる社会へ転換しなければ、第二、第三の事件は防げません。
報告書は「未来の支援」への贈り物
最後に、委員を務めた志賀氏は、支援者に向けてこうメッセージを送っています。
「今回の報告書のように、事実がオープンにされることは、多くの人が学べる『すごい良い資料』になります」
もし、皆様の事業所で何らかの事故や虐待疑惑が生じ、第三者委員会が入ることになったとしたら。
その時は、保身に走って嘘をつくのではなく、「未来の支援のために」事実をありのままに話してください。
失敗や過ちを隠さず、検証し、共有財産として残すこと。
それが、障害のある人の権利を守り、支援の質を高めていくための唯一の道です。

まとめ:報告書を「読み合わせ」することから始めよう
三田市の報告書は、誰でも閲覧できるように公開されています。
これは単なる事件の記録ではなく、「家族責任論からの脱却」を目指すための教科書です。
- 私たちの支援は、家族に甘えすぎていないか?
- 「家族だから」という理由で、本人の権利を制限していないか?
障害福祉の研修動画サービス「スペシャルラーニング」では、
- 三田市監禁事件の報告書を教材とした権利擁護研修
- 家族支援と本人支援を両立させるアプローチ
- 虐待防止委員会の活性化プログラム
など、組織の倫理観をアップデートするための動画を配信しています。
悲劇を繰り返さないために。まずは「知る」ことから始めましょう。
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