【障害福祉の歴史】「措置」から「契約」へ。制度の変遷を知れば、今の支援の「あるべき姿」が見えてくる
【障害福祉の歴史】「措置」から「契約」へ。制度の変遷を知れば、今の支援の「あるべき姿」が見えてくる
日々の業務で「障害者総合支援法」や「虐待防止法」といった法律に触れることは多いと思いますが、そもそも「なぜ今の制度になったのか」、その歴史的背景を意識したことはありますか?
実は、日本の障害福祉の歴史を振り返ることは、単なる過去の勉強ではありません。
それは、「障害のある人を『管理の対象』から『権利の主体』へと変えてきた、人権回復の物語」を知ることそのものです。
今回は、戦後の法整備から現在の総合支援法に至るまでの流れを振り返り、私たち支援者が目指すべき「あるべき姿」について解説します。
この記事は、スペシャルラーニングのSL42から抜粋して作成しています。
講師は、全国手をつなぐ育成会連合会 常務理事 兼 事務局長の又村あおい(またむら あおい)先生です。

戦後〜昭和の時代:「措置」という名の行政処分
日本の障害福祉に関する法律は、戦後まもなく整備され始めました。
- 昭和24年:身体障害者福祉法
- 昭和25年:精神衛生法(現:精神保健福祉法)
- 昭和35年:精神薄弱者福祉法(現:知的障害者福祉法)
この時代のキーワードは「措置(そち)」です。
「措置」とは、行政処分の一種。つまり、「あなたの障害の程度なら、この施設のこのサービスを使いなさい」と、国や自治体が一方的に決める仕組みでした。
「お上の言う通り」の時代
当時は「福祉=行政が温情で与えるもの(恩恵)」という考え方が強く、「行政が責任を持って面倒を見る代わりに、障害者は決まった通りにしなさい」という、いわゆるパターナリズム(強い立場の者が弱い立場を管理する考え方)が支配的でした。
そこに、利用者の「意思」や「選択」が入る余地はほとんどありませんでした。

昭和56年の転換点:「完全参加と平等」
風向きが変わり始めたのは、昭和56年(1981年)の「国際障害者年」です。
国連が掲げたスローガンは「完全参加と平等」。
- 障害があろうとなかろうと、社会に参加するのは当たり前。
- 同じ人間として平等である。
このノーマライゼーションの概念が日本にも輸入され、「障害者は施設で大人しくしていればいい」という古い価値観に一石を投じました。
平成のパラダイムシフト:「契約」によるサービスの利用へ
そして、日本の福祉が劇的に変わったのが、平成15年(2003年)の「支援費制度」の導入です。
これは歴史的なパラダイムシフトでした。
長年続いた「措置(行政が決める)」が廃止され、「契約(利用者が決める)」へと移行したのです。
「受給者証」の誕生
利用者は行政から「受給者証」を受け取り、それを持って「どこの事業所を使うか自分で選び、事業所と対等に契約を結ぶ」形になりました。
ここで初めて、障害のある方が「お客様(サービスの利用者)」となり、事業所は「選ばれる努力」が必要なサービス業へと変化したのです。
そして現在へ:3障害の一元化と「選べる暮らし」
その後、平成18年の「障害者自立支援法」を経て、平成25年(2013年)に現在の「障害者総合支援法」が施行されました。
この過程で、以下の重要な変化が起きました。
- 3障害の一元化:身体・知的・精神(発達含む)が、共通の制度・サービスを使えるようになった。
- 権利擁護の強化:「障害者虐待防止法」「障害者差別解消法」が成立し、国連の「障害者権利条約」も批准。
目指すのは「暮らしぶりを選べる社会」
今の法制度の根底にあるコンセプトは、「当たり前に、暮らしぶりを選べる社会」です。
かつてのように「施設に入りなさい」と強制されるのではなく、
「地域で一人暮らしがしたい」
「グループホームで仲間と暮らしたい」
「就職して働きたい」
そうした一人ひとりの「選択」を尊重し、実現をサポートすること。
それが、現代の支援者に求められている役割です。
まとめ:歴史を知れば「支援」が変わる
歴史を振り返ると、今の私たちが当たり前に行っている「意思決定支援」や「個別支援計画」が、先人たちの長い闘いの上に成り立っていることが分かります。
もし現場で「なんで利用者のワガママを聞かなきゃいけないんだ」と言う職員がいたら、こう伝えてあげてください。
「昔は管理していたけれど、今はご本人が主役の時代なんだよ」と。
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