【自閉症支援事例】「嫌いな物も食べてしまう」利用者への対応|無理に完食する理由と支援策

【自閉症支援事例】「嫌いな物も食べてしまう」利用者への対応|無理に完食する理由と支援策

障害福祉サービス事業所の現場では、食事に関する悩みは尽きません。「偏食が激しくて食べてくれない」というケースも多いですが、逆に「嫌いなはずなのに、出されたものを全部食べてしまい、後で具合が悪くなる(吐く・反芻する)」というケースに頭を悩ませている管理者様もいらっしゃるのではないでしょうか。

「嫌なら残せばいいのに」と私たちは思いがちですが、重度の知的障害や自閉症のある方にとって、それは簡単なことではありません。

今回は、「苦手な食べ物を口に含んでトイレに流したり、反芻(はんすう)してしまう利用者様」の事例をもとに、その行動の背景にある心理と、具体的な支援アプローチについて解説します。

現場職員のスキルアップや、虐待防止(不適切な支援の防止)の観点からも、ぜひ参考にしてください。

この記事は、スペシャルラーニングのSL50から抜粋して作成しています。

講師は、自閉症eサービス全国ネット 代表の中山清司先生です。

【事例】嫌いなものを全て食べてしまい、後で吐いてしまう

今回ご紹介するのは、重度の障害があり、ほとんど話し言葉のない自閉症の方の事例です。

【困りごと】
事業所の給食で、嫌いなものも含めて出されたものを全て完食してしまいます。しかし、実は無理をして食べており、食後にトイレで吐いてしまったり、口の中に戻す「反芻(はんすう)」が見られたりしていました。

ご家族からは「苦手な食べ物は無理せず残せるようになってほしい」という要望がありましたが、現場ではうまくいきません。

職員が陥りがちな「言葉での確認」の限界

現場の職員は当初、本人に「これはいりませんか?」「嫌いですか?」と口頭で聞いてみました。しかし、ご本人はそれをうまく言葉で伝えることができず、結果として出されたものを機械的に口に運び続けていました。

普段の食事風景を一見すると「何でもよく食べる」ように見えますが、その裏で本人は苦しんでいたのです。

なぜ「食べたくない」と言えないのか?(氷山モデルでの分析)

なぜ、彼は嫌いなものを食べてしまうのでしょうか。この行動を理解するには、目に見える「行動」だけでなく、水面下にある「特性」や「背景」を見る氷山モデルの視点が必要です。

1. 「出されたものは食べる」という強固なマイルール

多くの自閉症の方は、経験に基づいたルールやパターンに忠実です。
おそらく幼少期や学校教育の中で「給食は残さず食べましょう」と指導されてきた経験が、成人になった今も「目の前にある食事は、きれいに食べきらなければならない」という絶対的なルール(こだわり)として定着している可能性があります。

2. 環境の理解不足とコミュニケーションの困難

「残してもいい」という抽象的な許可や、口頭での「嫌い?」という質問は、視覚優位な彼らには伝わりにくい場合があります。
彼に必要なのは、質問されることではなく「これは食べなくていい(取り除いていい)」という明確で視覚的なルールでした。

【実践】写真カードと構造化を使ったアプローチ

この事例で行われた支援は、いきなり食堂(本番環境)で練習するのではなく、刺激の少ない作業エリアで、視覚的な手がかり(構造化)を用いて「選ぶ」練習をすることでした。

ステップ1:リストアップと写真カードのマッチング

まず、職員とご家族が協力し「本人が嫌いであろう食べ物」をリストアップしました。そして、実際の食事とは別の場所・別の時間帯に、以下のトレーニングを行いました。

  1. 食材の写真を撮り、カードにする
  2. 実際の食材と、写真カードをマッチング(照らし合わせ)させる

この段階では「食べる」ことは求めず、単に「食材とカードを仕分ける」という作業として実施しました。彼は非常にスムーズにこれをこなしました。

ステップ2:ワークシステムを使った「仕分け」と「実食」

次に、自閉症支援で有効な「ワークシステム(左から右へ作業が進む仕組み)」を取り入れました。

  • 左側のトレイ:全ての食材(好きなもの+嫌いなもの)
  • 中央の作業:写真カードを見て判断する
  • 右側のトレイ:食べるもの

【具体的な手順】

  1. 嫌いなものの写真カード提示し、それに該当する食材は「トレイに取り出す(跳ねる)」ことを教える。
  2. 残った「好きなもの」だけを食べる。

結果として、彼は「写真カードにあるものは、食べてはいけない(取り出していい)」という視覚的な指示を理解し、見事に嫌いなものだけを分け、好きなものだけを食べることに成功しました。

ステップ3:現場への汎化(今後の課題)

静かな作業エリアでは成功しましたが、これをガヤガヤした食堂(日常のルーティンが強い場所)で実行するのはハードルが高いものです。
今後は、食堂でも「嫌いなものカード」を提示し、自分でカードをセットして取り除く練習へとステップアップしていくことが期待されます。

現場の支援力を高めるには「氷山モデル」の共有が不可欠

この事例から学べるのは、単なる「偏食の治し方」ではありません。

支援者が、利用者の行動だけを見て「なんで吐くんだろう?」「食べ過ぎなのかな?」と悩むのではなく、「もしかしたら、過去の学習で『残してはいけない』と思い込んでいるのではないか?」と、障害特性の視点から推測できたことが解決の鍵でした。

「氷山モデル」で支援の質は変わる

今回の事例の解説でも触れられていますが、支援においては以下の視点(氷山モデル)を持つことが重要です。

  • 環境は適切か?:ざわついた環境、見通しの立たない待ち時間が不安を煽っていないか?
  • 伝え方はわかりやすいか?:口頭指示ばかりで混乱させていないか?
  • 学習機会はあるか?:失敗体験ばかり積ませていないか?

問題行動が起きたとき、それを「どう止めさせるか」ばかり議論する事業所は、支援が行き詰まりがちです。一方で、「なぜその行動が起きるのか」という背景を、氷山モデルを用いて分析できる職員がいる事業所は、サービスの質が飛躍的に向上します。

まとめ:トップレベルの有識者の知見を、職員の「当たり前」にするために

今回ご紹介した事例のように、一見不可解な行動にも必ず理由があり、適切な「構造化」や「視覚支援」を行えば、利用者様は落ち着いて生活することができます。

しかし、こうした専門的な知識やアプローチ(氷山モデルや構造化)を、現場の管理者が一から職員全員に教え込むのは、時間的にもコスト的にも非常に困難ではないでしょうか。

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