【障害者虐待の判断基準】「悪気はなかった」は通用しない|通報義務と組織を守るリスク管理

【障害者虐待の判断基準】「悪気はなかった」は通用しない|通報義務と組織を守るリスク管理

障害福祉施設の運営において、経営者や管理者が最も恐れる事態の一つが「職員による利用者への虐待」です。

もし現場で虐待の疑いが生じたとき、あなたはどう判断しますか?
「あの職員に限って悪気はないはずだ」「指導熱心なあまり行き過ぎただけだ」……そう自分に言い聞かせて、対応を先送りにしていませんか?

しかし、障害者虐待防止法において「虐待をしたという自覚」の有無は一切問われません。

今回は、法的観点からの虐待の捉え方と、多くの管理者が躊躇してしまう「通報」が、結果として組織を救うことになる理由について解説します。

この記事は、スペシャルラーニングのSL39から抜粋して作成しています。

講師は、元 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課地域生活支援推進室 虐待防止専門官/障害福祉専門官であり、現在、社会福祉法人みんなでいきる 理事/障害福祉事業部長の片桐公彦先生です。

虐待の定義に「自覚」は問われない

まず、現場職員や管理者の意識改革として最も重要なのが、「虐待=悪意を持って行うもの」という誤解を捨てることです。

「しつけ」「指導」は免罪符にならない

実際の虐待事案では、職員が「虐待しているつもりはなかった」と証言するケースが後を絶ちません。

  • 「しつけのために厳しくした」
  • 「療育の一環として行った」
  • 「自傷行為があるから、拘束するのは仕方がない」

これらは一方的な言い訳に過ぎません。法律上、行為者が虐待だと認識していなくても、客観的に見て不適切な行為であれば、それは虐待となります。
「一生懸命やっているから」という理由は、虐待を正当化する根拠にはなり得ないのです。

本人が訴えられないなら、誰が気づくのか?

被害を受ける利用者様は、知的障害や特性により、自ら「虐待されている」と訴えることが難しい場合があります。

また、長期間にわたって不適切な扱いを受け続けると、「何をしても無駄だ」という無力感(学習性無力感)に支配され、抵抗や訴えそのものを諦めてしまうケースもあります。

職員には「早期発見の努力義務」がある

本人が言わないから虐待ではない、とは決してなりません。
だからこそ、障害者虐待防止法第6条では、私たち施設従事者に対し、一般国民よりも一段高い「早期発見の努力義務」を課しています。

「いつもと様子が違う」「アザがある」「職員に対し過度に怯えている」といったサインを見逃さない専門性が求められているのです。

虐待の疑いがあれば「通報義務」が生じる

では、虐待の兆候を見つけた場合、どうすべきでしょうか。
ここで多くの管理者が「確証がないから」と二の足を踏みますが、法律(第16条)は明確な答えを出しています。

「虐待を受けたと思われる」段階で通報義務

第16条には「虐待を受けたと思われる障害者を発見した者は、速やかに市町村に通報しなければならない」とあります。

重要なのは「思われる」という点です。
「虐待が確定してから」ではありません。「もしかしたら虐待かもしれない」と疑った時点で、法的な通報義務が発生します。

また、同条には「通報したことを理由として、解雇その他不利益な扱いを受けない」という、内部告発者を守る規定もあります。

データで見る「自ら通報(内部通報)」の増加

「通報=施設の不祥事=悪」というイメージがあるかもしれません。しかし、国の調査(令和元年度)によると、施設従事者による虐待通報のうち、約3割が「設置者・管理者」や「当該施設の職員」からの通報です。

これを福祉業界では「自ら通報(みずからつうほう)」と呼びます。

「内部から通報が出るなんてけしからん」という見方は古くなりつつあります。むしろ、「自浄作用が働いている健全な組織である」「法律の趣旨が浸透している」と、ポジティブに捉えられるようになっています。

【重要】「通報は全ての人を救う」という考え方

動画講義の中で紹介されている、日本社会事業大学専門職大学院の添田正樹先生の言葉に「通報は全ての人を救う」というものがあります。この視点こそ、管理者が持つべきリスクマネジメントの真髄です。

なぜ、通報が「救い」になるのか?

  1. 利用者を救う
    • 当然ですが、通報によって介入が入ることで、被害を最小限で食い止めることができます。
  2. 虐待者(職員)を救う
    • 早期に通報し止めることで、その職員がさらにエスカレートし、取り返しのつかない犯罪行為に及ぶのを防げます。結果、社会的制裁や刑事・民事責任も最小限で済みます。
  3. 施設・法人を救う
    • 最も恐れるべきは、隠蔽が発覚した場合です。行政処分は重くなり、マスコミ報道による社会的信用の失墜は免れません。早期に自ら通報し、誠実に対応することで、法人の責任やダメージも最小限に留めることができるのです。

通報は、組織を裏切る行為ではありません。組織の致命傷を防ぐための「抑止力」なのです。

まとめ:隠蔽体質を脱却し、報告できる組織風土を

「虐待かもしれない」と思ったとき、それを言い出せる空気はあなたの施設にありますか?
それとも、「余計なことを言うな」という無言の圧力が働いていませんか?

虐待防止法を遵守することは、利用者様を守るだけでなく、法人と職員の未来を守ることと同義です。

障害福祉の研修動画サービス「スペシャルラーニング」では、今回解説した通報義務の重要性や、虐待の芽を摘むための組織運営について、専門家の講義動画を提供しています。

  • 虐待の5類型と具体的な事例
  • 通報後の行政対応の流れ
  • 虐待を生まないチーム作り

「知らなかった」「悪気はなかった」で組織が崩壊する前に。
全職員でコンプライアンス意識を高めるための研修ツールとして、ぜひご活用ください。

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