【個別支援計画】「できない」を「できる」にするだけが支援じゃない!QOLと経験を広げる目標設定のコツ

個別支援計画には、「本人の力の向上」「生活経験の拡大」「QOL(生活の質)の向上」といった項目があります。
これらは計画の要となる部分ですが、多くの支援者が陥りがちなのが、「本人の能力(スキル)を上げること」にこだわりすぎてしまうことです。
「箸を使えるようにする」「計算ができるようにする」…これらはもちろん大切ですが、それ以上に大切な視点があります。
今回は、毎年同じ目標を書き続けないための、「QOL重視」の目標設定について解説します。
この記事は、スペシャルラーニングのSL94から抜粋して作成しています。
講師は、日総研出版「障害者の個別支援計画の考え方・書き方」の著者であり、武庫川女子大学 文学部 心理・社会福祉学科の教授の松端 克文(まつのはな かつふみ)先生です。
1. 「箸が使える」より「美味しく食べる」が大事
「本人の力の向上」とは、一般的に「できないことをできるようにする」ことを指します。
- 例:スプーンでしか食べられない人に、箸を使えるように練習する。
これは本人の将来にとってプラスになるならOKです。
しかし、そのトレーニングが本人にとって苦痛であったり、身体機能的に非常に困難である場合はどうでしょうか?
無理に練習させて食事が嫌いになってしまっては本末転倒です。
人生においてより重要なのは、「QOL(生活の質)」です。
- QOLの視点:道具がスプーンであっても、仲間と楽しく、美味しく食事ができること。
「能力向上」と「QOL」を天秤にかけ、本人が生き生きと過ごせる方を選ぶ勇気を持ちましょう。

2. 「計算」できなくても「買い物」はできる
「生活経験の拡大」という項目でよくあるのが、「一人で買い物に行けるように、金銭管理(計算)を練習する」という目標です。
しかし、計算が苦手な方にとって、お釣りの計算を完璧にマスターするのは至難の業です。ここにこだわると、何年も同じ目標を掲げ続けることになります。
発想の転換:環境と人でカバーする
「計算ができること」と「買い物ができること」は別です。
計算ができなくても、生活経験は広げられます。
- 方法:1000円札を出して、お釣りをもらえば買い物は成立する。
- サポート:店員さんに「足りなかったら商品を戻してください」と伝えるスキル(または支援者が間に入ること)があればいい。
「一人で完璧にやる」ことだけが正解ではありません。
周りのサポートや環境をうまく使い、結果として「買い物ができた!」「映画に行けた!」という経験を得ることの方が、人生を豊かにします。
3. 毎年同じ目標になっていませんか?
「金銭管理ができるようになる」「挨拶ができるようになる」
もし、何年も同じ目標が計画書に書かれ、成果が上がっていないのであれば、アプローチを変える必要があります。
- × 本人の努力不足:もっと練習させる。
- ○ 支援の工夫不足:本人と周りとの関係を調整して、実現する方法を探す。
「映画は一人で行けなくても、誰かと一緒に行ければOK」と考えれば、すぐにでも実行でき、本人の生活は豊かになります。
まとめ:目指すのは「生き生きとした生活」
個別支援計画で最も重視すべきは、「その支援によって、本人がどれだけ生き生きとした生活を送れるようになるか」です。
「能力」や「努力」の向上も大切ですが、それらはあくまで手段の一つ。
これら3つの要素(能力・経験・QOL)は重なり合っています。
「できる・できない」の枠を超えて、「どんな楽しい生活を実現するか」という視点で目標を描いてみてください。
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