【個別支援計画】「親亡き後」と「回転ドア現象」にどう備える?家族・就労・住居の未来図の描き方

個別支援計画には、日々の生活だけでなく、数年先、数十年先を見据えた「人生の設計図」としての役割があります。
特に重要なのが、「家族関係の調整」「就労支援」「住居の確保」の3点です。
これらは、ご本人のライフステージや、ご家族の高齢化といった社会問題と密接に関わっています。
今回は、単なる「希望」を書くだけで終わらせない、現実的で未来につながる計画作成の視点について解説します。
この記事は、スペシャルラーニングのSL94から抜粋して作成しています。
講師は、日総研出版「障害者の個別支援計画の考え方・書き方」の著者であり、武庫川女子大学 文学部 心理・社会福祉学科の教授の松端 克文(まつのはな かつふみ)先生です。
1. 家族関係の調整:「親も高齢化」する現実に向き合う
日本における障害者支援は、長らく家族(特に親御さん)が担ってきました。
しかし今、「親なき後」問題や「8050問題(80代の親が50代の子を支える)」が深刻化しています。
かつては「親がいなくなったら入所施設へ」という流れがありましたが、現在は国の方針もあり、大規模施設よりもグループホームでの地域生活が主流になりつつあります。
計画に落とし込むべきポイント
- 現状認識: ご家族がいつまでも元気とは限りません。「親が支えられなくなった時、どこで暮らすのか?」を避けて通らずに話し合う必要があります。
- 移行の検討: 今は実家から通所していても、将来的に「グループホーム」や「一人暮らし」へ移行するための準備期間として、計画を位置づけます。
2. 就労支援:「回転ドア現象」を止める環境調整
就労支援において、よく見られるのが「回転ドア現象」です。
- 施設で訓練して就職する。
- 職場でうまくいかず、辞めて戻ってくる。
- また訓練して就職する…。
このループが繰り返される原因は、本人の能力不足だけではありません。多くの場合、「受け入れ側の職場環境」に問題があります。
「合理的配慮」を具体的に伝える
障害者差別解消法にある「合理的配慮」とは、障害による不利益をなくすための調整のことです。
- 例:1000円を100円玉10枚に両替したい時
- 悪い対応: 100円玉を出してきた本人に対し、「何やってるんだ!」「なんで分からないんだ!」と怒る。(パワハラ、無理解)
- 良い対応(合理的配慮): 「あ、10枚欲しいんだね」と理解し、交換する。あるいは、「10枚くださいと言えばいいよ」と伝える。
個別支援計画の役割は、「この人はこういうタイプなので、こういう配慮をお願いします」と企業側に伝え、本人がなじめる環境を作ることです。
単に「働けるようにトレーニングする」だけでなく、「企業との連携(環境調整)」までをセットで考える必要があります。
3. 住居の確保:「重度だから無理」は思い込み
「将来どこで暮らすか」は、家族関係の調整とセットで考えます。
① 親元を離れる「練習」を入れる
いきなり一人暮らしやグループホームはハードルが高いものです。
計画の中に、以下のような「スモールステップ」を組み込みましょう。
- 年間数回、ショートステイを利用して「親と離れて泊まる」練習をする。
- 自分でできる身の回りのことを少しずつ増やす。
② 重度でも一人暮らしは可能
「障害が重いから、一人暮らしは無理」と決めつけていませんか?
住居の確保で大切なのは、「一人でできるか」ではなく、「どのような支援(ヘルパーなど)があれば可能か」という視点です。
重度の方であっても、24時間の介護体制などの「ふさわしい支援」さえセットできれば、一人暮らしもグループホームでの生活も可能です。
「できない」を前提にせず、必要な支援体制を組み立てることこそが、専門職の腕の見せ所です。

まとめ:計画書は「作文」ではなく「戦略書」
個別支援計画は、行政に提出するための単なる「作文」ではありません。
「Aさんが幸せに生きていくために、具体的にいつ、誰が、どんなアクションを起こすか」を記した戦略書です。
- 親が高齢になったらどうするか?
- 職場でつらい思いをしないために、何を企業に伝えるか?
- どんな支援があれば、希望の暮らしができるか?
これらの問いに対する答えを一つひとつ言語化し、本人・家族・支援者で共有すること。それが、ご本人の人生を守り、豊かにすることに繋がります。
障害福祉の研修動画サービス「スペシャルラーニング」では、
- 「親なき後」を見据えた家族との合意形成・面談の進め方
- 企業への「合理的配慮」の具体的な依頼・交渉術
- 重度障害者の地域生活(一人暮らし)を実現した支援事例
など、利用者の将来を切り拓くために必要な、一歩踏み込んだ支援スキルを動画で配信しています。
未来の不安を安心に変える計画を作るために。ぜひご活用ください。
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