【虐待の現状】通報件数の増加は「悪」なのか?「自ら通報」が示す健全化の兆し

「施設での虐待通報が増えている」
ニュースなどでこの話題を聞くと、「虐待が増えているなんてけしからん!」「福祉の質が下がっているのでは?」と不安に感じるかもしれません。
しかし、国の調査データを深く読み解くと、少し違った景色が見えてきます。
今回は、厚生労働省の「障害者虐待対応状況調査(施設従事者等による虐待)」のデータをもとに、近年増えている「自ら通報」という現象とその意味について解説します。
この記事は、スペシャルラーニングのSL39から抜粋して作成しています。
講師は、元 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課地域生活支援推進室 虐待防止専門官/障害福祉専門官であり、現在、社会福祉法人みんなでいきる 理事/障害福祉事業部長の片桐公彦先生です。
1. データに見る「通報者」の変化
令和元年度の調査(施設従事者による虐待)において、通報・相談件数は2,761件でした。
注目すべきは、「誰が通報したか」という内訳の変化です。
- 1位:本人による届出(18.1%)
- これは例年変わらずトップです。
- 2位:設置者・管理者(14.5%)
- 【重要】 調査開始以来初めて、管理者が2位になりました。
- 3位:当該事業所のその他職員(14.2%)
なんと、管理者と職員を合わせると、約3割(28.7%)が施設内部からの通報で占められているのです。
2. 「自ら通報(みずからつうほう)」とは?
私たち福祉の世界では、このように施設の管理者や職員自身が、内部で起きた虐待の疑いを通報することを「自ら通報」と呼んでいます。
かつては「隠蔽体質」などと批判されることもありましたが、このデータは、
「内部の人間が、見て見ぬふりをせずに声を上げ始めている」
という大きな変化を示しています。
3. 通報増加は「法律が浸透した証」
マスコミ報道などでは、「通報件数の増加=虐待の蔓延=けしからんこと」として扱われがちです。
しかし、現場の実情を知る立場から見ると、これは必ずしもネガティブなことだけではありません。むしろ、「法律の趣旨が現場に浸透してきた成果」とも言えます。
なぜ「自ら通報」が増えるのは良いことなのか?
- 早期発見・早期対応:
内部の人間が通報することで、事態が深刻化する前の早い段階で介入できます。 - 自浄作用の高まり:
「隠さずに報告する」というコンプライアンス意識や、虐待防止研修の成果が出てきている証拠です。 - 管理者の意識改革:
設置者・管理者からの通報が一貫して伸び続けているのは、国や自治体が指導してきた「責任者こそが通報義務を果たそう」というメッセージが届いている結果と言えます。

まとめ:件数の裏にある「意識の変化」を見よう
通報件数が増えているのは、虐待そのものが急増したというよりも、「今まで表面化していなかったものが、正しく報告されるようになった(透明性が上がった)」と捉えることができます。
「虐待ゼロ」はもちろん目指すべきゴールですが、まずは「虐待の芽を見つけたら、すぐに自分たちで通報・相談できる」という健全な組織風土を作ることが、利用者さんを守る第一歩です。
障害福祉の研修動画サービス「スペシャルラーニング」では、
- 「虐待防止法」の基礎知識と通報義務の理解
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- 身体拘束廃止に向けた具体的な取り組み
など、組織全体で虐待防止に取り組むための研修動画を多数配信しています。
「隠さない、強い組織」を作るために。ぜひご活用ください。
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