【身体拘束】やむを得ず身体拘束を行うときの留意点

「虐待防止法」において、正当な理由のない身体拘束は「身体的虐待」とみなされます。
原則として身体拘束の廃止は必須の取り組みです。

しかし、現場では自傷行為や他害行為などにより、利用者の命を守るために「やむを得ず」拘束を行わなければならない場面も存在します。
今回は、身体拘束を例外的に行うための「3つの要件」と、現場で最も多い「安全確保」に関する誤解について解説します。

この記事は、スペシャルラーニングのSL39から抜粋して作成しています。

講師は、元 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課地域生活支援推進室 虐待防止専門官/障害福祉専門官であり、現在、社会福祉法人みんなでいきる 理事/障害福祉事業部長の片桐公彦先生です。

1. 例外的に認められる「3つの要件(ロック)」

身体拘束は、緊急やむを得ない場合に限り、例外的に認められます。
ただし、以下の3つの要件を「全て」満たしている必要があります。どれか一つでも欠ければ、それは虐待となります。

  1. 切迫性(せっぱくせい)
    • 利用者本人や、他の利用者の生命・身体・権利が危険にさらされる可能性が著しく高いこと。
    • 「今すぐ止めないと命に関わる」という緊急度が必要です。
  2. 非代替性(ひだいたいせい)
    • 身体拘束以外の方法では、その危険を回避できないこと。
    • 「他に手立てがない」と断言できるまで、あらゆるケアや環境調整を尽くしたかどうかが問われます。
  3. 一時性(いちじせい)
    • あくまで一時的なものであること。
    • 「いつ終わるか分からない」「漫然と続ける」のはNGです。

記録の義務

これらを満たして行う場合でも、その時の「本人の様態」「時間」「状況」などを詳細に記録に残す義務があります。

2. 現場の最大の勘違い「安全確保=拘束ではない」説

ここが今回一番お伝えしたいポイントです。現場からよくこんな質問が出ます。

「本人の安全確保のために行っているので、これは身体拘束には当たらないですよね?」

答えは「逆」です。
「安全確保のために行う行動制限は、すべて身体拘束です」

なぜか?

そもそも、ほとんどの身体拘束は「安全確保」を目的に行われています。

  • 他の利用者を叩いてしまうから、部屋に鍵をかける ➡ 安全確保
  • 自分の顔を叩いてしまうから、ミトンをつける ➡ 安全確保
  • 転倒して怪我をするから、ベルトをする ➡ 安全確保

「安全のためだから許される(拘束ではない)」のではなく、「安全のためであっても、それは身体拘束である」と認識しなければなりません。

まとめ:言い訳を探さず、正面から向き合う

「これは拘束じゃないよね?」と抜け道(言い訳)を探すのはやめましょう。

「これは間違いなく身体拘束である。しかし、命を守るために、要件を満たした上で『やむを得ず』行うのだ」

この意識の転換が重要です。
「拘束である」と自覚するからこそ、「どうすれば外せるか?」「時間は短くできないか?」という議論(適正化)が生まれるのです。

障害福祉の研修動画サービス「スペシャルラーニング」では、

  • 身体拘束の「3要件」を具体的に判断するケーススタディ
  • 「安全確保」と「拘束」のジレンマに向き合う職員の対話会
  • 拘束ゼロを目指すための「環境調整」と「代替案」のアイデア集
  • 身体拘束実施時の正しい「記録・報告」の書き方

など、現場の葛藤に寄り添いながら、身体拘束の適正化・廃止に向けた具体的なステップを学ぶための動画を配信しています。
利用者の尊厳と安全の両方を守るために。ぜひご活用ください。

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