【身体拘束】シーティング(姿勢保持)は身体拘束に当たるのか?「必要な支援」と「拘束」の境界線

「車椅子で姿勢を保つためのベルトは、身体拘束になるのでしょうか?」
現場で非常に判断に迷う、「シーティング(座位保持)」の扱いについて解説します。
結論から言うと、身体機能の補完として必要なシーティングは、いわゆる「排除すべき身体拘束」とは区別して考えます。
さらに、最新の国の手引き(令和6年更新)では、「それを行わないことが逆に虐待(ネグレクト等)になる」という強い表現で、その必要性が認められています。
この記事は、スペシャルラーニングのSL39から抜粋して作成しています。
講師は、元 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課地域生活支援推進室 虐待防止専門官/障害福祉専門官であり、現在、社会福祉法人みんなでいきる 理事/障害福祉事業部長の片桐公彦先生です。
1. なぜ「シーティング」はグレーゾーンだったのか?
肢体不自由や頚髄損傷の方など、自力で姿勢を保つのが難しい方に対して、ベルトやテーブル付きの車椅子を使用することがあります。
これらは形式的には「体を固定する」ため、身体拘束に見えるかもしれません。
しかし、この固定には重要な目的があります。
- 呼吸や食事の確保: 体が傾くと呼吸ができない、誤嚥する。
- 残存能力の活用: 体幹を固定することで、動く方の手足を使って車椅子を漕げる。
つまり、これがないと生きていけない、あるいは動けないのです。これを行動制限(拘束)と呼ぶべきか、支援と呼ぶべきか、現場では長らく議論がありました。

2. 「身体的な支援」と「行動障害への対応」は区別する
国(厚生労働省)のQ&A(平成31年)や考え方では、以下の2つを明確に区別して運用しています。
A. 身体機能の維持・補完(シーティング等)
- 基準: 医師の意見書や診断書に基づいていること。本人・家族の同意があること。
- 記録: 毎日細かく「何時から何時まで」と記録する必要はありません。「個別支援計画書」に、使用目的や方法を明記しておけばOKです。
B. 行動障害への対応(自傷他害防止)
- 基準: 叩いてしまう、飛び出してしまう等を防ぐための拘束(施錠、ミトン等)。
- 記録: こちらは厳格です。「緊急やむを得ない3要件」を満たした上で、毎日「時間」「理由」「様子」を記録しなければなりません。
3. 【重要】令和6年の最新解釈「しないことが虐待になる」
動画の最後にある補足情報が非常に重要です。
令和6年7月に更新された「障害者虐待の防止と対応の手引き」では、以下のように明記されました。
肢体不自由(特に体幹機能障害)の方に対して、ベルト類を装着して身体を固定する行為は、やむを得ない身体拘束ではなく、その行為を行わないことがかえって虐待に該当するため留意が必要。
つまり、医師の指示が必要なレベルの姿勢保持ベルトを、「拘束だからダメだ」と言って外してしまうことは、「必要なケアを行わない=ネグレクト(放棄)」にあたるということです。
まとめ:医師の指示と計画への記載を徹底しよう
シーティングに関するベルト等は、利用者の「生きる力」や「活動する力」を支えるためのものです。
- 医師の指示(意見書・診断書)があるか確認する。
- 個別支援計画に、「なぜ必要なのか(呼吸確保、活動のため等)」を記載し、同意を得る。
この手順を踏んでいれば、過度に「拘束だ」と恐れる必要はありません。堂々と、必要な支援として提供してください。
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