【虐待の現状】「夜間・行動障害」が高リスク?給料よりも深刻な“倫理観”の欠如

虐待を未然に防ぐためには、「どこで」「誰に」「なぜ」虐待が起きているのか、傾向を知ることが第一歩です。
今回は、施設従事者による虐待の発生場所や要因、そして一般企業(使用者)における虐待の特徴について、統計データから見えてくる現実を解説します。

この記事は、スペシャルラーニングのSL39から抜粋して作成しています。

講師は、元 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課地域生活支援推進室 虐待防止専門官/障害福祉専門官であり、現在、社会福祉法人みんなでいきる 理事/障害福祉事業部長の片桐公彦先生です。

1. 「夜間ケア」と「行動障害」に潜むリスク

虐待が発生しやすい場所や対象者には、明確な傾向があります。

① どこで起きている?(施設種別)

  • 入所施設・グループホーム
    やはり、夜間のケアが必要な「住まいの場」での発生が多くなっています。密室になりやすく、職員の負担も大きいことが要因と考えられます。
  • 放課後等デイサービス
    件数は増えていますが、これは事業所の総数自体が急増していることも背景にあります。
  • 就労継続支援B型
    ここでは、「作業」に対する指導が行われます。支援者の熱意が行き過ぎて「厳しすぎる指導」となり、それが虐待と判断されるケースが一定数あると推測されます。

② 誰が受けている?(被虐待者)

  • 知的障害のある方:圧倒的に多いのが現状です。
  • 行動障害のある方
    特筆すべきは、虐待を受けた人の37.5%(調査開始以来最多)に「行動障害」があったという点です。いわゆる「強度行動障害」の方など、支援の難易度が高いケースにおいて、虐待が発生しやすいという厳しい現実があります。

2. 虐待の最大要因は「給料」ではない

なぜ、職員は虐待をしてしまうのでしょうか?
「給料が安くてやってられないからだ」という声もよく聞かれますが、データを見ると給料は主たる原因ではありません。

発生要因ワースト3

  1. 教育・知識・介護技術の不足
    「どう支援していいか分からない」というスキルの欠如がトップです。
  2. 職員のストレス・感情コントロールの問題
    個人の資質だけでなく、余裕のない職場環境も影響しています。
  3. 倫理観・理念の欠如
    ここが重要です。給料の問題よりも、「この施設は何のためにあるのか」という法人の理念や倫理観が現場に浸透していない組織で虐待は起きています。

これらは、個人の責任にするのではなく、組織として「研修」や「環境整備」でカバーすべき課題です。

3. 企業(使用者)による虐待は「お金」の問題

一方で、一般企業などの「使用者」による虐待の傾向は、施設とは全く異なります。
圧倒的に多いのが「経済的虐待」です。

最低賃金法違反が「虐待」になる

これは、利用者のお金を盗むといった搾取だけでなく、「最低賃金法違反(労働基準法違反)」が虐待としてカウントされるためです。

  • 住み込みで働かせているが、時給換算すると数百円しかない。
  • 経費として不当に天引きされ、手取りが極端に少ない。
  • 経営不振による賃金の未払い。

企業側が悪意を持っていなくても、適切な賃金を支払わないことは、障害者虐待防止法上、立派な「経済的虐待」となります。

まとめ:データが示す「やるべきこと」

データは私たちに具体的な対策を教えてくれています。

  • 支援現場:行動障害への専門知識を高めること、職員のストレスケア、そして「理念」の共有。
  • 企業:適正な雇用管理と賃金支払いの遵守。

感情論ではなく、こうした事実に基づいた対策を打つことが、虐待のない社会への近道です。

障害福祉の研修動画サービス「スペシャルラーニング」では、

  • 虐待リスクを減らす「強度行動障害」への支援技術
  • カッとなる自分を抑える「アンガーマネジメント・ストレスケア」
  • 組織の理念を浸透させる「倫理・コンプライアンス研修」
  • 不適切な指導と支援の違いを学ぶケーススタディ

など、データで浮き彫りになった課題を解決するための、実践的な研修動画を多数配信しています。
知識と技術で、利用者と職員の両方を守るために。ぜひご活用ください。

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