【強度行動障害とは】叩かれる・噛まれる恐怖を越えて。現場が知るべき「標準的支援」の基本

【強度行動障害とは】叩かれる・噛まれる恐怖を越えて。現場が知るべき「標準的支援」の基本
「利用者さんに急に髪を引っ張られた」
「パニックになると手がつけられず、職員が怪我をしてしまう」
障害者支援施設や入所施設の現場において、こうした激しい行動(強度行動障害)への対応は、支援者にとって最も大きな悩みの一つです。
「いつ何が起こるか分からない」という恐怖心から、ただ耐えるだけの支援になってしまっている現場も少なくありません。
しかし現在、国を挙げてこの課題に対する「標準的支援(スタンダードな支援方法)」の整理が進んでいます。
今回は、そもそも強度行動障害とは何か、そして現場が目指すべき支援の方向性について解説します。
この記事は、スペシャルラーニングのSL20から抜粋して作成しています。
講師は、自閉症eサービス全国ネット 代表の中山清司先生です。

そもそも「強度行動障害」とは?
強度行動障害とは、医学的な診断名ではありません。
主に自閉スペクトラム症(ASD)や知的障害のある人が示す、生活環境への著しい不適応行動の状態を指します。
具体的には、以下のような行動が頻繁に、または強く現れる状態です。
- 自傷: 自分の頭を叩く、壁に打ち付ける
- 他害: 支援者を叩く、噛みつく、蹴る
- 破壊: 物を投げる、ガラスを割る
- パニック: 泣き叫ぶ、飛び出す
これらの行動により、本人の健康や安全が損なわれるだけでなく、家族や支援者の生活・業務にも深刻な影響を及ぼすため、専門的な支援の組み立てが必要とされています。

「怖い」で終わらせない。「標準的支援」という解決策
現場の職員にとって、実際に暴力を振るわれることは恐怖です。
「怖い」「近づきたくない」と思ってしまうのは、人間として自然な反応でしょう。
しかし、ただ恐れたり、力で押さえつけたりするだけでは、状況は悪化する一方です。
そこで今、重要視されているのが「標準的支援」という考え方です。
これは、「経験や勘」頼みの対応ではなく、「根拠に基づいた適切な支援手順」をチームで共有し、実践していくことを指します。
標準的支援の「2つのキーワード」
では、標準的支援とは具体的に何をするのでしょうか?
その核となるのが、以下の2つのキーワードです。
1. 特性の理解
激しい行動には、必ず「理由(背景)」があります。
「わがままで暴れている」のではなく、自閉症や知的障害の特性(感覚過敏、コミュニケーションの困難さ、見通しのなさなど)が、環境とミスマッチを起こしている結果として行動が現れていると考えます。
まずは、その人の障害特性を深く理解することがスタート地点です。
2. PDCAサイクル
支援は「やって終わり」ではありません。
- Plan(計画): 特性に基づき、支援手順(仮説)を立てる
- Do(実行): チームで統一した支援を行う
- Check(評価): 行動が減ったか、本人が落ち着いたかを確認する
- Action(改善): うまくいかなければ計画を修正する
このサイクルを回し続けることで、「たまたま落ち着いた」ではなく「支援によって落ち着ける環境を作れた」という状態を目指します。
まとめ:支援は「戦い」ではなく「整理」である
強度行動障害への支援は、利用者との戦いではありません。
彼らが何に苦しみ、なぜその行動をとるのかを「整理」し、穏やかに過ごせる環境を整えていく作業です。
「特性の理解」と「PDCA」。
この2つを軸にした標準的支援を学ぶことで、現場の恐怖感は、専門職としての「対応力」へと変わっていきます。
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