【強度行動障害】支援は「実験」の繰り返し。行き当たりばったりの対応を卒業する「PDCAサイクル」

【強度行動障害】支援は「実験」の繰り返し。行き当たりばったりの対応を卒業する「PDCAサイクル」
「利用者が暴れた時、どう止めるか?」
現場ではつい、目の前の激しい行動を鎮静化することに必死になりがちです。
しかし、その場しのぎの対応(叱る、力で止める)をいくら繰り返しても、行動障害は改善しません。むしろ悪化することさえあります。
前回、標準的支援の柱の一つである「特性の理解」について解説しました。
今回はもう一つの柱、「PDCAサイクル」についてです。
これは、支援を「イチかバチかの賭け」にするのではなく、「根拠のある仮説と検証(実験)」に変えていくためのプロセスです。
この記事は、スペシャルラーニングのSL20から抜粋して作成しています。
講師は、自閉症eサービス全国ネット 代表の中山清司先生です。

直接「止めよう」としても意味がない
まず大前提として、強度行動障害(激しい自傷や他害、破壊など)が起きた時、その行動にダイレクトに介入しても効果はありません。
- 「ダメでしょ!」と叱る
- 力ずくで止める
これらは火に油を注ぐだけです。
重要なのは、「なぜその行動が起きたのか?」という原因(氷山の下)にアプローチすることです。
そこで必要になるのが、PDCAサイクル(Plan・Do・Check・Action)です。
支援におけるPDCAサイクルの回し方
では、具体的に現場でどう回していけばいいのでしょうか。
動画内で挙げられた「こだわり行動への対応」を例に見てみましょう。
1. Plan(計画・仮説)
まず、ご本人の「自閉症の特性」から原因を推測し、対策を立てます。
- 原因分析: 「いつも机の上にあるお菓子が見えているから、欲しくてパニックになっているのではないか?」
- 計画: 「じゃあ、お菓子をご本人の視界に入らない棚の中に片付けてみよう」
2. Do(実行)
立てた計画(プラン)を、実際に現場でやってみます。
- 実行: お菓子を棚にしまい、見えないように環境を整える。
3. Check(評価)
やってみた結果、ご本人の行動がどう変わったかを確認します。
- 成功: パニックが収まった → 「このプランは有効だ!」
- 失敗: 収まらなかった、あるいは別の物を探し始めた → 「このプランでは不十分だった」
4. Action(改善)
評価に基づいて、次の手を打ちます。
- 継続: 有効なら、それをチームの標準ルールにする。
- 修正: ダメだったなら、「次は棚に鍵をかけてみよう」「代わりになる安心グッズを渡してみよう」と別のプランを立てる。
失敗してもいい。大切なのは「次」があること
このサイクルの素晴らしい点は、「失敗が許される」ということです。
支援に「絶対の正解」はありません。
「やってみて、ダメなら次を考える」。この繰り返しによって、その人にとっての「より良い支援(ベストプラクティス)」が見つかっていきます。
この考え方は、強度行動障害への対応だけでなく、あらゆる場面で応用できます。
- 就労支援: 「この仕事は向いているかな?(Plan)」→「やってみた(Do)」→「難しそうだった(Check)」→「別の工程を試そう(Action)」
- 余暇支援: 「外出の準備手順を変えてみよう」
こうしてPDCAを回し続けることが、ご本人の生活の質(QOL)を高める唯一の道です。

まとめ:チームで「仮説」を共有しよう
一人で悩んでいても、PDCAは回りません。
「昨日はこれを試したけどダメだった」「じゃあ今日はこれを試そう」と、チーム全体で情報を共有し、実験を繰り返すことが大切です。
「感情」で対応するのではなく、「計画」で対応する。
それが、標準的支援のゴールです。
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