【強度行動障害の対策】「座っていられない」のはなぜ?集中力を劇的に変える「環境調整」の技術

【強度行動障害の対策】「座っていられない」のはなぜ?集中力を劇的に変える「環境調整」の技術
「作業中にすぐ立ち歩いてしまう」
「机の上にあるものを何でも触ってしまい、活動にならない」
自閉スペクトラム症や強度行動障害のある利用者様への支援において、このような「落ち着きのなさ」や「集中の続かなさ」に悩むことはありませんか?
それを「本人のやる気の問題」や「障害のせい」にして諦めてはいけません。多くの場合、原因は「環境」にあります。
今回は、行動障害を未然に防ぎ、ご本人が本来の力を発揮できるようにするための「環境調整(物理的構造化)」の具体策について解説します。
この記事は、スペシャルラーニングのSL20から抜粋して作成しています。
講師は、自閉症eサービス全国ネット 代表の中山清司先生です。

1. 「刺激」を減らし、安全と集中を守る
自閉症の方は、目に入る情報や周囲の状況に非常に敏感です。
私たちにとっては気にならない物でも、彼らにとっては「気になって仕方がない強烈な誘惑」や「不安の種」になることがあります。
まず行うべきは、「引き算」の環境作りです。
- こだわりグッズを隠す: お菓子、おもちゃ、特定のコレクションなど、本人が執着しやすい物は視界に入らない棚や別室に片付けます。
- 危険物を排除する: ハサミや割れ物など、パニック時に危険となる物は手の届かない場所へ移動します。
- 広すぎない空間: 体育館のような広すぎる場所は、どこにいていいか分からず不安になり、逆に走り回りたくなることがあります。適切な広さに区切ることも重要です。
「目の前にあるのに触っちゃダメ!」と叱るのではなく、最初から「触ってはいけないものを置かない」。これが鉄則です。
2. 「場所」と「行動」をセットにする(ゾーニング)
「ここで何をすればいいのか?」
言葉での説明理解が苦手な彼らにとって、空間そのものがメッセージになるように工夫します。これを「場所と行動のセット化」と言います。
- 食事テーブル: ご飯を食べる時だけ使う。
- 作業テーブル: 仕事や課題をする時だけ使う。
- ソファー: 休憩する時だけ使う。
このようにエリアを明確に分けることで、ご本人は「このテーブルに座ったら作業だ」「ソファーに行けば休める」と、場所に身体を置くだけで見通しを持つことができるようになります。
逆に、同じテーブルで食事も作業も休憩もさせてしまうと、切り替えがうまくいかず混乱の原因になります。
3. 「見えない敵(妨害刺激)」をブロックする
集中力を削ぐのは、物だけではありません。音、光、匂いといった「感覚刺激」もコントロールが必要です。
パーテーションの活用
作業中、隣の人の動きや廊下の人影が見えると、どうしても気が散ってしまいます。
そんな時は、パーテーション(ついたて)で視界を遮り、目の前の課題だけに集中できる「個室的な空間」を作ることが有効です。
五感への配慮
- 匂い: 作業中に給食のいい匂いが漂ってくると、気になって作業どころではありません。換気や部屋の配置を考慮します。
- 音: 話し声や生活音がうるさい環境は避けます。
- 光: 窓からの日差しが眩しすぎないか、カーテン等で調整します。

まとめ:叱る回数を減らす「予防」のアプローチ
環境調整の目的は、単に行動を制限することではありません。
「彼らが過ごしやすい(失敗しにくい)環境」を用意することで、行動障害を未然に防ぐことにあります。
「また立ち歩いた!」と注意する前に、ふと周りを見渡してみてください。
気になってしまうポスターが貼ってありませんか?
作業に関係ない物が置いてありませんか?
環境を変えれば、行動は変わります。
まずは一つのテーブル、一つの棚の整理から始めてみましょう。
障害福祉の研修動画サービス「スペシャルラーニング」では、
- ケース別・集中できる作業スペースのレイアウト実例
- 100円ショップのアイテムでできる簡易パーテーションの作り方
- 強度行動障害支援における構造化(TEACCH)の基礎
など、現場ですぐに実践できる環境調整のアイデアを動画で配信しています。
利用者様にとっても、支援者にとっても快適な空間を作るために。ぜひご活用ください。
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