【自閉症支援の失敗談】「そこに虫がいる!」利用者に見えて支援者に見えない時、どう動く?

【自閉症支援の失敗談】「そこに虫がいる!」利用者に見えて支援者に見えない時、どう動く?
「小さな虫がいる!」
利用者がそう訴えているのに、支援者の目には何も見えない…。
そんな時、あなたならどう対応しますか?
「気のせいですよ」「いませんよ」と諭そうとして、かえってパニックを招いてしまった経験はないでしょうか。
今回は、自閉症支援を専門に行う生活介護事業所「ボンワークス枚方」の職員・江端さん(支援歴5年)の失敗談から、「利用者の『見えている世界』への寄り添い方」を学びます。
この記事は、スペシャルラーニングのSL64から抜粋して作成しています。
講師は、自閉症eサービス全国ネット 代表の中山清司先生です。

「見えない虫」と「迷い」が生んだパニック
江端さんが担当していたのは、自分の気持ちを言葉で伝えるのが苦手な利用者さんでした。
ある日、その方が必死に「小さい虫がいる」と教えてくれました。
しかし、江端さんの目には、虫らしきものは全く見当たりません。
(えっ、いないけど…どうしよう?)
(否定していいのか?探したフリをするべきか?)
江端さんがそうやって対応に迷い、オロオロと悩んでしまっている数秒〜数十秒の間。
その「間」に耐えられなくなった利用者さんは、我慢の限界を超え、暴れてパニックになってしまいました。

失敗の原因は「事実確認」に時間をかけたこと
支援者としては、虫が本当にいるかを確認したくなるのは当然の心理です。
しかし、利用者さんにとっては「今、そこに不快なものがいる」ということが絶対的な現実であり、恐怖の対象です。
そのSOSを出しているのに、支援者が動いてくれない(迷っている)時間は、彼らにとって絶望的な待ち時間となってしまったのです。
解決策:「プシュッ」と一吹きで解決する
この失敗を経て、江端さんは対応をガラリと変えました。
次に利用者さんが「虫がいる」と訴えた時、有無を言わさず「即座に行動する」ことにしたのです。
「納得」を生むスプレー作戦
虫がいると言われたら、見えようが見えまいが、すぐに消臭スプレーなどを「プシュッ」と空間に撒くようにしました。
- 利用者: 「虫がいる!(SOS)」
- 支援者: (即座にスプレーを構え)「分かりました!退治します!(プシュッ)」
- 利用者: 「……(いなくなった、やってくれた)」→ 納得・安心
結果、ご本人は暴れることなく、落ち着きを取り戻すことができました。
学び:客観的事実よりも「本人の現実」を優先する
この事例から学べる重要なポイントは2つあります。
1. 瞬発力が命
自閉症支援において、特にパニックの前兆がある時は、「迷っている時間」が一番のリスクになります。
正解を探して沈黙するよりも、「分かった!」と反応を示すスピードが安心感に繋がります。
2. 「見えていること」にして対応する
たとえ幻覚であっても、あるいは小さなゴミを見間違えていたとしても、ご本人にとっては「虫がいる不快な状況」は真実です。
そこで「いないよ」と否定するのは、彼らの感覚を否定することになります。
「虫がいるんですね(共感)」→「プシュッ(対処)」
この一連の流れを視覚的・感覚的に分かりやすく見せることで、ご本人は「自分の訴えが届いた」「解決した」と納得できるのです。
まとめ:支援者の「正しさ」より利用者の「安心」
「嘘をついてスプレーをするのは気が引ける」と思う支援者もいるかもしれません。
しかし、この場面で優先すべきは、科学的な事実確認ではなく、目の前の利用者の恐怖を取り除くことです。
「見えない虫」への対応は、まさに支援者の柔軟性が試される瞬間。
「いない」と説得するのではなく、「退治したよ」と安心を手渡せる支援者でありたいですね。
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