【支援現場のリアル】「大丈夫」は魔法の言葉じゃない?失敗から学ぶ「信頼」と「氷山モデル」

【支援現場のリアル】「大丈夫」は魔法の言葉じゃない?失敗から学ぶ「信頼」と「氷山モデル」
「利用者さんがパニックになってしまった…。私の対応は失敗だった」
現場で支援をしていると、予期せぬトラブルや激しい行動に直面し、落ち込んでしまうことがあるかもしれません。
前回紹介した、見えない虫に怯える利用者に対し、戸惑ってパニックを招いてしまった江端さん(支援員)の事例。
一見「失敗」に見えるこのケースですが、専門家(自閉症eサービス・中山氏)の視点は少し違います。
今回は、「本当の失敗とは何か?」、そしてなぜ言葉だけの慰めが通用しないのかについて、事例を深掘りして解説します。
この記事は、スペシャルラーニングのSL64から抜粋して作成しています。
講師は、自閉症eサービス全国ネット 代表の中山清司先生です。

「一発で成功」なんてあり得ない
まず、支援者の皆さんに伝えたいのは、「1回でうまくいくことなんて、めったにない」ということです。
特に重度の知的障害や自閉症のある方は、表現が難しく、私たちも彼らの思いを汲み取るのに時間がかかります。
江端さんのケースも、最初は戸惑ってパニックになりましたが、その後「スプレーをする」という対応策を見つけ、本人の安心に繋げることができました。
中山氏はこう語ります。
「その後、スプレーをして彼が安心したなら、それは『成功』なんです。PDCAを回して、より良い支援が見つかればいい。多少の失敗は勉強です」
うまくいかなかったことだけを切り取って自分を責める必要はありません。大切なのは、そこから何を学ぶかです。
絶対に避けるべき「本当の失敗(大失敗)」とは?
では、支援現場において取り返しのつかない「本当の失敗」とは何でしょうか?
それは、対応の手際が悪かったことではなく、以下の3つをしてしまうことです。
- 否定する: 「そんなのいないよ!」「違うよ!」と本人の訴えを跳ね返す。
- 力づくで止める: 暴れる相手を力でねじ伏せる。
- 勝手な解釈を押し付ける: 「どうせ〇〇でしょ」と決めつける。
これらをやってしまうと、利用者との信頼関係は崩壊し、「この人は分かってくれない」「この部屋には入りたくない」と心を閉ざされてしまいます。
江端さんは戸惑いはしましたが、決して彼を否定したり、力で抑えたりはしませんでした。だからこそ、その後のリカバリーが可能だったのです。

「大丈夫」という言葉の無力さ
パニックになっている利用者に対し、つい「大丈夫、大丈夫」「気にしないで」と声をかけてしまいがちです。
しかし、自閉症の人にとって、根拠のない「大丈夫」はほとんど効果がありません。
- 「大丈夫」: 抽象的すぎて、何がどう大丈夫なのか分からない。
- 「気にしない」: 気になっているから訴えているのに、解決になっていない。
彼らを納得させるには、言葉の説得ではなく、「具体的なアクション(解決策)」が必要です。
- × 言葉: 「虫なんていないから大丈夫」
- ○ 行動: 殺虫スプレーを見せて「シューッ」と音を立てる(退治した証拠を見せる)。
「こうすれば解決するんだ」という具体的な形を見せることで初めて、彼らは心から安心できるのです。
支援の極意は「氷山モデル」
その後、この利用者さんはどうなったでしょうか?
江端さんが毎回スプレーで対応してくれる安心感からか、今では「虫、倒しておいたわ」と自分で報告してくれるほどたくましくなったそうです。
この事例が教えてくれるのは、「氷山モデル」の考え方です。
- 氷山の一角(見える部分): パニック、暴れる、虫がいると言う。
- 水面下(見えない部分): 怖い、どうしていいか分からない、助けてほしい。
支援者は、目に見える行動だけに反応するのではなく、水面下にある「本当の思い」を常に探り続ける姿勢が大切です。
「分かった気にならない」こと。それが支援の質を高める一番の近道です。
障害福祉の研修動画サービス「スペシャルラーニング」では、
- 「氷山モデル」を使った行動分析の基礎
- パニック時のNG対応とOK対応の比較
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など、現場の失敗を「成功」に変えるためのマインドとスキルを動画で配信しています。
失敗を恐れず、利用者さんと共に成長していくために。ぜひご活用ください。
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