【自閉症支援の失敗談】「手袋がない!」たったそれだけで暴れてしまう理由とは?「言えばいいじゃん」が通用しない現場のリアル

【自閉症支援の失敗談】「手袋がない!」たったそれだけで暴れてしまう理由とは?「言えばいいじゃん」が通用しない現場のリアル

「作業を始めようとしたら、必要な道具が一つだけ足りない」
私たちなら、「すみません、〇〇がありません」とスタッフに声をかけて解決するだけの些細な出来事です。

しかし、自閉スペクトラム症のある利用者様にとって、その「たった一つの欠品」が、パニックや激しい怒りの引き金になることがあります。

今回は、生活介護事業所「bonワークス枚方」の職員・川邊さん(支援歴3年)の失敗談から、「なぜ彼らは道具がないだけで怒るのか?」という心理と、支援者が持つべき「準備の責任」について解説します。

この記事は、スペシャルラーニングのSL73から抜粋して作成しています。

講師は、自閉症eサービス全国ネット 代表の中山清司先生です。

失敗談:「手袋ごときで、なんで怒るの?」

川邊さんがまだ新人だった頃、ある利用者さんの作業準備をしている時に、うっかり軍手(手袋)を用意し忘れてしまいました。
すると、その利用者さんは激しく怒り、暴れてしまったのです。

当時の川邊さんは、こう思いました。

「たかが手袋ごときで、なんでそこまで怒るんや?」
「ないなら『ないです』って言ってくれればいいやん」

これは、多くの支援者が最初に抱く素朴な疑問かもしれません。
「言葉で伝えれば済む話なのに、なぜ暴力に訴えるのか理解できない」。そう感じていたのです。

なぜ「言えばいい」が通用しないのか?

しかし、自閉症の特性を深く学ぶにつれ、川邊さんはその考えが間違いだったことに気づきます。

彼らが怒った本当の理由は、単に「手袋が欲しかったから」だけではありません。

1. 「いつも通り」が崩れる恐怖

自閉症の方は、手順や環境が「いつもと同じ」であることに安心感を覚えます。
道具が揃っていないという状況は、彼らにとって「想定外の事態(エラー)」であり、パニックを引き起こす要因になります。

2. 「ない」と言えないもどかしさ

ここが最も重要なポイントです。
彼らの中には、困った時に「手袋がありません、ください」と言語化して助けを求めるスキルを持っていない人が多くいます。

  • 想定外の事態に混乱する。
  • 助けを求めたいけれど、言葉が出ない。
  • どうしていいか分からず、感情が爆発する。

その結果が、「暴れる」「怒る」という行動として表れていたのです。
つまり、彼らはワガママで暴れていたのではなく、「困っているのに伝えられない!」と必死に訴えていたのです。

プロの支援とは「完璧な準備」をすること

このことに気づいた川邊さんは、支援のスタンスを大きく変えました。

「利用者さんが『ない』と言えないなら、言わなくて済むようにしよう」

道具のセットミスや忘れ物を徹底的になくし、「座ればすぐに作業ができる完璧な環境」を用意することに全力を注ぐようになりました。
それは、「怒らせないため」というよりも、「余計な混乱を与えず、安心して過ごしてもらうため」の配慮です。

まとめ:失敗させない環境を作るのが支援者の役目

「言えば分かるだろう」というのは、支援者側の甘えかもしれません。
言葉で伝えるのが苦手だからこそ、彼らは支援を必要としています。

  • 道具は揃っているか?
  • 手順は分かりやすいか?

「手袋一つ」の準備不足が、利用者さんの平穏な一日を壊してしまうことがあります。
「準備8割」と言われるように、支援の本番は利用者さんが来る前から始まっているのです。

障害福祉の研修動画サービス「スペシャルラーニング」では、

  • 自閉症の方がパニックになる「想定外」のメカニズム
  • 作業効率と安心感を高める「構造化(環境設定)」の具体例
  • 言葉での表出が苦手な方へのコミュニケーション支援

など、現場の失敗から学び、プロフェッショナルな支援環境を作るためのノウハウを動画で配信しています。
「たかが準備、されど準備」。支援の質を細部から高めるために、ぜひご活用ください。

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