【自閉症の文化】「これくらい平気」は通用しない?こだわりを尊重する支援の鉄則

「道具が一つないだけで、なぜあんなに怒るのか?」
「きれいに並べなくても、使えればいいじゃないか」

私たち支援者が「これくらい大丈夫だろう(大したことない)」と思っていることが、自閉スペクトラム症の方にとっては「絶対に許せないこと」である場合があります。
この価値観のズレが、現場でのトラブルやパニックの大きな要因です。

今回は、前回に引き続き職員・川邊さんの事例をもとに、彼らが大切にしている独自の世界観=「自閉症の文化」について解説します。

この記事は、スペシャルラーニングのSL73から抜粋して作成しています。

講師は、自閉症eサービス全国ネット 代表の中山清司先生です。

1. 私たちの「適当」は、彼らの「苦痛」

川邊さんは過去、作業道具の準備忘れ(セットミス)を繰り返し、そのたびに利用者さんを怒らせてしまった経験があります。
当初は「人間なんだから忘れることもある」「後で持ってくればいいやん」と軽く考えていました。

しかし、自閉症の方にとっての世界は、0か100かであることが多いです。

  • 中途半端が許せない
  • 何かが欠けている、ズレているのが気持ち悪い

私たちにとっての「多少のズレ」は、彼らにとっては「世界が壊れている」ような強烈な違和感になり得ます。
川邊さんは失敗を重ねる中で、「彼を変えようとするのではなく、僕らが改めないといけない」と気づき、完璧な準備を徹底するようになりました。

2. 独自の「文化」として尊重する

中山氏(専門家)は、これを「自閉症の文化」と表現します。

例えば、あるキャンプでの出来事です。
自閉症の子が、翌日の服を枕元にミリ単位できっちりと畳んで並べて寝ていました。
それを見たスタッフが「何やってるの〜」と冗談半分で少し崩してしまったところ、翌朝その子は激怒してパニックになりました。

私たちには理解しがたい行動でも、彼らにとっては「自分の精神の安定を保つための聖域(大切な儀式)」なのです。
それを「ふざけている」「神経質すぎる」と笑ったり、無理やり止めさせたりすることは、他国の文化を土足で踏みにじるような大変失礼な行為です。

3. 「やる気がない」と誤解しないで

自閉症の方の特性として、興味の凸凹(ギャップ)が激しいことがあります。

  • 道具の並び順には異常なほどこだわる。
  • でも、それ以外の(私たちが必要だと思う)ことは全く気にしない。

このギャップを見ると、知識のない支援者は「都合のいい時だけこだわって、ふざけている」「やる気がない」と誤解してしまいがちです。
しかし、これこそが障害の特性です。

「なんでこっちは頑張るのに、あっちはやらないの?」と責めるのではなく、「ここはこの人が一番大切にしているポイントなんだな」と理解し、そのこだわりを尊重する姿勢が必要です。

4. 支援のポイント:中途半端に関わらない

では、具体的にどう関わればよいのでしょうか。

① 価値観を押し付けない

「これくらい平気」というこちらの価値観で、彼らのルール(配置や手順)を勝手に崩さないこと。

② 本人の大事なポイントを知る

「この人は、ここさえ守れば落ち着く」というポイントを見極めます。
新人スタッフには、「自閉症とは…」と長く説明するよりも、「この人はこれを大事にしているから、ここだけは動かさないでね」と具体的に伝えるとスムーズです。

③ 環境で補う

本人に「我慢しなさい」と教えるのではなく、周りが環境を完璧に整える(補う)ことで、トラブルは未然に防げます。

まとめ:正そうとするのではなく、知ろうとする

自閉症の方を「正そう」としても、うまくいきません。
彼らには彼らの、私たちとは違う「文化」や「ルール」があるだけです。

「面倒くさい」と思う前に、「へぇ、この人はここを大事にしているんだ」と面白がってみる。
その文化を知り、尊重することが、お互いにストレスのない関係を築く第一歩となります。

障害福祉の研修動画サービス「スペシャルラーニング」では、

  • 自閉症特有の「こだわり」のメカニズムと対応策
  • 感覚過敏や興味の偏りを活かした支援術
  • 新人職員に「障害特性」を分かりやすく伝える指導法

など、利用者の「不可解な行動」の理由を解き明かし、適切な支援に繋げるための動画を配信しています。
彼らの文化を深く理解し、プロの支援者になるために。ぜひご活用ください。

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