【情報共有の失敗】「星マーク動かして」だけじゃダメ?支援の“意図”が伝わらないと利用者が怒られる理由

「パート職員さんは夕方には帰ってしまうから、会議に参加できない」
「申し送り(引継ぎ)の時間が短すぎて、細かいことまで伝えきれない」

シフト制の福祉現場において、「情報共有」は永遠の課題です。
特に、良かれと思って導入した新しい支援ツールが、スタッフ間で正しく共有されず、結果として利用者様が混乱してしまうケースは後を絶ちません。

今回は、職員・川邊さんの困りごとである「星マークの磁石」のエピソードから、「やり方(How)」だけでなく「意図(Why)」を共有することの重要性について解説します。

この記事は、スペシャルラーニングのSL73から抜粋して作成しています。

講師は、自閉症eサービス全国ネット 代表の中山清司先生です。

1. 良かれと思った工夫が、裏目に…

川邊さんは、解体作業の手順(手袋をつける→板を敷く→…)がうまく定着しない利用者様のために、ある工夫をしました。
それは、スケジュールボードに「星マークの磁石」をつけること。

  • 狙い: 「今はここを見てね」と注目すべき場所を視覚的に教えるため。
  • ルール: 作業が進むごとに、星マークを次の手順へ動かす。

これは、ご本人の「どこを見ればいいか分からない」という困りごとを助ける素晴らしいアイデアでした。

2. 伝わっていたのは「作業」だけだった

しかし、この支援はうまくいきませんでした。なぜなら、他のスタッフに「その支援の意味」が正しく伝わっていなかったからです。

川邊さんは「星マークを動かしてください」という「やり方(動作)」は伝えていました。
しかし、「なぜ星マークが必要なのか?(=注目させるため)」という「意図(根拠)」までは共有できていませんでした。

その結果、他のスタッフは、

  • 星マークを適当な位置に置いてしまう。
  • そもそも星マークを使い忘れる。

といった対応になり、利用者様は手順が分からずミスをしてしまい、結果として「なんで間違えるの!」と怒られてしまったのです。

3. 「方法」よりも「理由」を伝える

日々の申し送りは時間が限られています。川邊さんの現場でも、利用者一人ひとりに割ける時間はごくわずかです。
だからこそ、情報共有の質を変える必要があります。

「これをやってください」という業務連絡だけでは、人は機械的に動くだけになり、応用が利きません。

  • ❌️ 「星マークを動かしてください」
    → 忙しいと忘れる。「まあいいか」となる。
  • ⭕️ 「この人は注目するのが苦手なので、目印として星マークを使っています」
    → 「なるほど、これがないと困るんだな」と理解し、丁寧に対応するようになる。

時間がなくても、「なぜやるのか(Why)」を一言添えるだけで、スタッフの動きは変わります。

4. ツールそのものに「カンペ」を書く

また、口頭での伝達には限界があります。
会議に出られないパート職員さんや、引き継ぎ漏れを防ぐための有効な手段は、「支援ツールそのものに説明を書く」ことです。

例えば、スケジュールボードの端に、

【重要】星マークは「今見るところ」を示します!必ずご本人と一緒に動かしてください。

とテプラやメモを貼っておくのです。
これなら、担当者が誰であっても、その場を見るだけで支援の意図を理解し、統一した対応が可能になります。
これを「支援者のための構造化」と言います。

まとめ:情報のズレは、利用者の不利益になる

情報共有がうまくいかないと、被害を受けるのは常に利用者様です。
「スタッフによってやり方が違う」という状況は、彼らにとって混乱と不当な叱責を招く原因になります。

「やり方」を教えるのではなく、「その支援が必要な理由」を語ること。
そして、口頭に頼らず、現場のモノに情報を語らせること。
この二手間で、チームの支援力はグッと高まります。

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