【自閉症支援】「まさか」をゼロにする!福祉現場の『危険予知トレーニング(KYT)』とプロの想像力

「まさか、戻ってくるとは思わなかった」
「良かれと思って置いたのに、飲まれてしまった」

前回紹介した、利用者様の特性(目に入ったものを取ってしまう)によるトラブル。
これを「不注意だった」で済ませていては、いつか大きな事故に繋がります。

事故を防ぐために必要なのは、反射神経ではなく「想像力(予測する力)」です。
今回は、福祉現場における「危険予知トレーニング(KYT)」の具体的な方法と、プロの支援者に求められる視点について解説します。

この記事は、スペシャルラーニングのSL73から抜粋して作成しています。

講師は、自閉症eサービス全国ネット 代表の中山清司先生です。

1. 支援のプロは「マルチタスク」で守る

支援者の仕事は、ただ利用者のそばにいるだけではありません。
利用者を見守りつつ、同時に環境全体に目を配り、危険の芽を摘む「マルチタスク」が求められます。

  • 「このままこれを置いておくと、どうなるか?」
  • 「彼がトイレから戻ってきたら、次にどこへ向かうか?」

常にアンテナを張り巡らせ、「こうなるかもしれない(かもしれない運転)」で動くこと。
西本さんの失敗は、「戻ってこないだろう(だろう運転)」という油断が招いたものでした。

2. 現場でできる「危険予知トレーニング(KYT)」

では、どうすればこの「想像力」を鍛えられるのでしょうか。
動画では、具体的なトレーニング方法が紹介されています。

イラストや写真を使う

「危険が潜んでいる場面」のイラストや写真を見て、スタッフ全員で話し合います。

  • 「どこが危ない?」
  • 「この後、どんなトラブルが起きそう?」
  • 「どうすれば防げる?」

動画で振り返る(おすすめ!)

もっと効果的なのは、自分たちの現場の動画を使うことです。
作業フロアを上から5分程度撮影し、それをチームで見返してみましょう。

  • 「あ、ここにハサミが出しっぱなしだ」
  • 「この利用者さんの動線上に、荷物が置かれている」

客観的な映像を見ることで、「自分たちの現場のどこに隙があるか」がリアルに見えてきます。

3. 「構造化(整理整頓)」は最強の安全管理

「工場(こうじょう)では、整理整頓された現場ほど事故が少ない」と言われますが、これは福祉施設でも全く同じです。

支援手法としての「構造化(TEACCH)」は、利用者の理解を助けるだけでなく、「安全管理」の側面も持っています。

  • 不要な物が視界に入らない。
  • 道具の置き場所が決まっている。
  • 動線が確保されている。

雑然とした環境は、利用者のパニックを誘発するだけでなく、誤飲や怪我のリスクを高めます。
「環境を整えること=事故を防ぐこと」。この意識を徹底しましょう。

4. 利用者の「次の行動」を予言せよ

危険予知の核心は、利用者一人ひとりの特性を知り尽くすことにあります。

  • 「彼は大きな音が苦手だから、工事の音がしたら飛び出すかもしれない」
  • 「彼女は見通しが立たないとパニックになるから、予定変更の時は要注意だ」

普段の様子を観察(アセスメント)していれば、「次はこう動くはずだ」という予測の精度が上がります。
トラブルが起きてから「どうしよう」と慌てるのではなく、「起こる前に対処(ディスカウント)」することこそが、プロの仕事です。

まとめ:チームでお互いの動きも予測する

予測すべき対象は、利用者だけではありません。
「西本さんは、気になるとすぐ動いちゃう癖があるから、またお茶を置いちゃうかもしれない」

このように、スタッフ同士の行動特性(癖)もチームで把握し合えていれば、「今、置かないで!」と声を掛け合い、ミスを未然に防ぐことができます。

「まさか」という言葉を現場からなくすために。
今日から、「次はどうなる?」と問いかける習慣をつけましょう。

障害福祉の研修動画サービス「スペシャルラーニング」では、

  • 事業所内で実践できる「危険予知トレーニング(KYT)」の素材集
  • ヒヤリハット事例から学ぶ「環境整備」のチェックリスト
  • 事故発生時の初動対応と再発防止策の立て方

など、現場の安全を守り、利用者とスタッフの笑顔を守るためのリスクマネジメント研修を動画で配信しています。
事故のない安心安全な現場を作るために。ぜひご活用ください。

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