【自閉症の特性】トイレットペーパーを全部使い切る…「終わりがわからない」人への共通アプローチ

「トイレットペーパーを、あるだけ全部巻き取ってトイレを詰まらせてしまう」
「ハンドソープをボトルが空になるまで出し続ける」

自閉スペクトラム症の方の支援現場では、このような「使いすぎてしまう(終わりがわからない)」という悩みによく直面します。
「適当な量でやめてね」「ほどほどにね」と伝えても、なぜ彼らは全部使ってしまうのでしょうか?

今回は、前回紹介した西本さんの「写真付きペーパー」の成功事例を深掘りし、自閉症の特性である「終わりがわからない」ことへの共通した対策について解説します。

この記事は、スペシャルラーニングのSL73から抜粋して作成しています。

講師は、自閉症eサービス全国ネット 代表の中山清司先生です。

1. なぜ「全部」使ってしまうのか?

私たちは感覚的に「これくらいで十分」と判断できますが、自閉症の方にとって「適量」「ほどほど」といった抽象的な概念を理解するのは非常に困難です。

彼らの行動原理はシンプルです。
「そこに物があるから、使う」

目の前にトイレットペーパーがある限り、それは「巻き取る対象」であり、なくなって初めて「終わり」と認識します。
これは悪戯ではなく、「どこで終わればいいのかという基準(ゴール)が自分の中にない」ために起こる現象です。

2. 「トレイ(お盆)」の法則を応用する

この問題を解決するカギは、「一対一対応」という特性を活かすことです。

専門家の中山氏は、わかりやすい例として「食事のトレイ」を挙げます。

  • 多くの利用者は、自分のトレイの中にある食事は食べるが、隣の人のトレイには手を出しません。
  • なぜなら、「トレイ=自分の領域(My Area)」という視覚的な境界線が明確だからです。

西本さんが成功した「自分専用のトイレットペーパー(写真付き)」は、まさにこの理論をトイレに応用したものです。
「自分の写真がついているホルダー=自分の領域」と定義することで、それ以外の共用ペーパー(他人の写真付き)には手を出さなくなりました。

3. 「ダメ」と教えるより「これだけ」と示す

「全部使っちゃダメ!」と禁止する支援は、彼らにとってストレスであり、根本解決になりません。
重要なのは、「使っていいのはこれだけ(ここが終わり)」と視覚的に肯定することです。

成功するための共通アプローチ

この事例から導き出される、他の場面でも使える「共通の解決策」は以下の2点です。

  1. 具体的に示す(視覚化)
    言葉で「ちょっとだけ」と言うのではなく、写真、マーク、量(小分けにする)などで、物理的に境界線を見せます。
  2. いつも同じやり方で示す(一貫性)
    「今日はいいけど明日はダメ」ではなく、常に同じルール、同じ環境設定にします。

「自分のもの」と「他人のもの」の区別さえつけば、彼らは驚くほどルールを守ることができます。
逆に、一度でも「他人のものを取っても大丈夫だった」という経験をしてしまうと、そこから修正するのは大変になります。

まとめ:曖昧さをなくせば、行動は収まる

「終わりがわからない」利用者に対して、支援者がすべきことは「我慢させること」ではありません。
「ここが終わりですよ」というゴールを、目に見える形で作ってあげることです。

  • トイレットペーパーなら「専用ホルダー」
  • 作業なら「カゴが空になったら終わり」
  • 手洗いなら「ペーパー1枚だけ渡す」

「物」と「行動」を一対一で対応させ、曖昧さを排除する。
この視点を持つだけで、現場の「使いすぎトラブル」は劇的に減らすことができます。

障害福祉の研修動画サービス「スペシャルラーニング」では、

  • 「終わり」を視覚的に伝える構造化(TEACCH)のアイデア集
  • 自閉症の方の「概念理解」を助ける支援グッズの作り方
  • 行動障害を予防する環境調整の基礎知識

など、利用者の「分からない」を「分かった!」に変え、自立を促すための具体的な支援技術を動画で配信しています。
抽象的な指示を卒業し、伝わる支援をするために。ぜひご活用ください。

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