【支援のゴール】「ちゃんとさせる」が正解じゃない?自閉症支援における「ウェルビーイング(幸福)」という新しい物差し

「今日は調子が悪そうだから、作業を減らしてあげたい」
「でも、一度減らしたら『明日もやりたくない』って言われるんじゃないか?」
「甘やかしていると思われて、他のスタッフに示しがつかないかも…」

現場の支援員なら誰もが一度は抱く、この葛藤。
西本さん(支援員)も、「自分の判断で活動を減らすこと」への不安を感じていました。

しかし、自閉症支援の専門家・中山先生この記事は、スペシャルラーニングのSL73から抜粋して作成しています。

講師は、自閉症eサービス全国ネット 代表の中山清司先生です。は、「作業をさせること」よりも大切な視点があると言います。
それが、「ウェルビーイング(Well-being=より良い人生)」という考え方です。

1. 「ちゃんとさせる」の呪縛

福祉の現場には、無意識のうちに「ちゃんとしてほしい」という価値観が根付いています。

  • 「スケジュール通りに動いてほしい」
  • 「真面目に働いてほしい」
  • 「設定した課題をこなしてほしい」

もちろん、これらは大切なことですが、行き過ぎると「支援者が決めた通りに動かすこと」が目的になってしまいます。
中山氏はこう問いかけます。
「その作業をやることが、本当にその人にとって『より良い人生』に繋がっているのでしょうか?」

もし、本人がその作業を「つまらない」「苦痛だ」と感じているなら、それを無理やり完遂させることが、果たして正解と言えるでしょうか。

2. 自立課題を一日中やることが「幸せ」か?

自閉症支援の手法の一つに、一人で作業を行う「自立課題(TEACCH)」があります。
これは、「自分一人でできた!」という達成感や自尊心を高める素晴らしいツールです。

しかし、手段が目的化してしまうと危険です。
ある事業所では、利用者が一日中、誰とも会話せず黙々と自立課題をこなしているそうです。

  • スキル面: 確かに「自立」している。
  • 人生面: 誰ともやり取りがなく、孤立している。

これを総合的に見た時、「本当に幸せな人生(ウェルビーイング)」と言えるでしょうか?
ただ作業をこなすだけでなく、コミュニケーションを楽しんだり、余暇を満喫したり、家事をしたり。
人生の豊かさは「作業量」だけでは測れません。

3. 「どっちでもいい」と思える勇気

西本さんの「作業を減らしてもいいのか?」という悩みに対し、中山氏は究極の回答をします。

「ぶっちゃけ言うと、どっちでもいいんですよ」

作業を減らそうが、増やそうが、それ自体は些細なことです。
重要なのは、「その判断が、その人の人生にどう良い影響を与えるか」を考えているかどうかです。

  • 「今日は疲れているから、リラックスして明日また頑張るための休息にしよう(=ウェルビーイングのための減量)」

この視点があれば、活動を減らすことは「甘やかし」ではなく、「人生の質を高めるための調整」になります。

4. 「明日」ではなく「1年後」を見る

それでも、「一度サボると癖になるのでは?」という不安は残ります。
これに対するアドバイスは、「時間軸を長く取る」ことです。

私たちはつい、「明日もしなかったらどうしよう」「来週もダメだったらどうしよう」と、短期的な視点で不安になりがちです。
しかし、半年や1年という長いスパン(期間)で見てみてください。

  • 「今は止まっているけど、半年後には別の活動を楽しんでいるかもしれない」
  • 「去年は暴れていたけど、今は少し落ち着いている」

人間の成長や回復には波があります。
「一度失敗したら終わり」「こうじゃないとダメ」と硬く考えず、「1年後に笑っていればOK」くらいの広い心構えを持つことが、支援者自身の心の余裕にも繋がります。

まとめ:支援の目的は「労働者」を作ることではない

私たちの仕事は、言うことを聞く労働者を作ることではありません。
障害があっても、その人らしく幸せに生きることを支えるのが仕事です。

「これをやらせなきゃ」と焦った時は、一度立ち止まって問いかけてみてください。
「これは、この人の『より良い人生』に繋がっているかな?」

その問いの先に、マニュアルにはない、その人だけの正解が見つかるはずです。

障害福祉の研修動画サービス「スペシャルラーニング」では、

  • 「ウェルビーイング」を軸にした個別支援計画の立て方
  • 作業偏重にならないための「余暇・コミュニケーション」支援の実践例
  • 利用者のモチベーションを高める環境設定の工夫

など、タスク管理だけでなく、利用者の人生そのものを豊かにするための支援視点を学べる動画を配信しています。
「作業」の先にある「幸せ」を支援するために。ぜひご活用ください。

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