【高次脳機能障害の就労支援】作業ができない・人間関係で揉める…復職を成功させる「リアル・フィードバック」とは?

【高次脳機能障害の就労支援】作業ができない・人間関係で揉める…復職を成功させる「リアル・フィードバック」とは?

高次脳機能障害のある方の就労支援において、ご本人と支援者の間で認識のズレが生じることはありませんか?

「自分はもっとできるはずだ」と以前と同じ働き方を望むご本人に対し、「今の状態ではミスが多すぎて難しい」と感じる支援者。
このギャップを埋めない限り、無理な復職による再離職や、職場でのトラブルは防げません。

今回は、名古屋市総合リハビリテーションセンター(名古屋リハ)が提唱する「社会適応モデル」をもとに、ご本人の「自己理解」を促し、適切な社会復帰へ導くための支援ポイントを解説します。

この記事は、スペシャルラーニングのSL56から抜粋して作成しています。

講師は、特定非営利活動法人ジョブコーチ・ネットワークの理事であり、名古屋市総合リハビリテーションセンター 自立支援部長の稲葉 健太郎(いなば けんたろう)先生です。

就労を阻む「2つの大きな壁」

病院でのリハビリを終え、就労移行支援などを利用して復職を目指す際、大きく分けて2つの課題が立ちはだかります。

1. 作業遂行上の課題(仕事ができない)

記憶障害、注意障害、遂行機能障害などが原因です。

  • 以前のようにマルチタスクがこなせない。
  • 注意が散漫になり、単純なミスを繰り返す。
  • 結果として、「できる作業・活動が限られてしまう」という現実です。

2. 社会的行動の課題(人間関係のトラブル)

感情のコントロール不良や、病識の欠如(自己理解不足)が原因です。

  • 注意されるとカッとなって怒り出す。
  • 自分のミスを認められず、同僚と衝突する。

これらの問題を解決する第一歩は、スキルアップ以前に、「自分にはこういう障害があるんだ」と本人が理解すること(自己理解)です。ここが出発点にならない限り、行動を変えることはできません。

名古屋リハ式「リアル・フィードバック」の技術

では、どうすれば自己理解を促せるのでしょうか。
名古屋リハでは、実際の訓練や社会生活の中で起こった出来事に対し、その場ですぐに「リアル・フィードバック」を行うことを推奨しています。

ただ「ダメでしたね」と言うのではありません。以下の3ステップで伝えます。

  1. 事実の確認:「今、こういうミスが起きましたね」「こういうトラブルになりましたね」と客観的な事実を共有する。
  2. 原因の解説:「なぜうまくいかなかったか」を支援者の視点で解説する。(例:注意がそれていたから、手順を忘れていたから等)
  3. 対処法の助言:「次はどうすれば防げるか」を提案する。(例:メモを取る、確認作業を入れる等)

失敗体験をただの「嫌な思い出」で終わらせず、「自分の特性を知るためのデータ」としてフィードバックし続けることで、少しずつ自己理解が深まっていきます。

自己理解が「環境」を変える

このプロセスを経て自己理解が進むと、ご本人の行動に変化が現れます。

  • 補う行動:記憶力が悪いからメモを取ろう、アラームを使おうといった工夫ができるようになる。
  • 環境の選択:「自分には以前のような複雑な仕事は難しいかもしれない」と受け入れ、自分に合った仕事や環境を選ぶ(環境調整)ことができるようになる。

自分の能力を客観視し、環境側を調整することを受け入れる。これができて初めて「社会適応」が図られ、安定した就労へとつながります。

まとめ:支援は「就職」で終わりではない

高次脳機能障害の支援は、就職が決まったらゴールではありません。
職場環境が変われば、また新たな課題が見つかることもあります。その都度、相談に乗り、フィードバックと環境調整を繰り返していく継続的な関わりが必要です。

支援者には、ご本人を傷つけずに事実を伝え、前向きな対策へ導く「高度なコミュニケーションスキル」が求められます。

障害福祉の研修動画サービス「スペシャルラーニング」では、

  • 名古屋リハの「社会適応モデル」の詳細解説
  • リアル・フィードバックの具体的な会話例
  • 就労定着に向けた企業連携のポイント

など、高次脳機能障害の就労支援に特化した専門プログラムを配信しています。
感覚的な支援から、理論に基づいた支援へ。ぜひスタッフ教育にご活用ください。

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