【ASD支援の誤解】「言えば分かる」から視覚支援は不要?当事者が語る「聞くことの疲労感」と、支援の本当の目的

【ASD支援の誤解】「言えば分かる」から視覚支援は不要?当事者が語る「聞くことの疲労感」と、支援の本当の目的
「この子は言葉で言えばちゃんと動いてくれるから、わざわざ絵カードなんて作らなくてもいいですよね?」
視覚的支援を提案した時、現場の支援者や親御さんから、よくこのような質問をいただきます。
確かに、結果として「指示通りに動けている」なら、それで十分な気がしますよね。
しかし、講師は「分かるからいい、という問題ではない」と警鐘を鳴らします。
そこには、外からは見えない「脳の疲労」の問題が隠されているからです。
この記事は、スペシャルラーニングのSL185から抜粋して作成しています。

【実験】音声だけで「ウォシュレット」を操作できますか?
なぜ「言えば分かる」だけでは不十分なのか。
動画内で紹介された、ある実験を想像してみてください。
あなたは今、初めて見る多機能トイレに入りました。ボタンには何も書いておらず、天井からこんなアナウンスが早口で流れてきます。
「大きいボタンは左から『止める』『お尻』『柔らかい』になります。ムーブの入切は右のボタンを押してください。下の小さいボタンは左側の2つが水勢、右側の2つが位置です…」
どうでしょう?
必死に集中すれば、なんとか操作できるかもしれません。しかし、ものすごく疲れませんか?
「えっと、左から2番目がなんだっけ…?」と、脳をフル回転させなければならないはずです。
もし、ボタンに「おしり」という文字や「噴水のマーク(絵)」があれば、一瞬で、何も考えずに操作できるのに。

当事者の本音。「分かるけど、ヘトヘトです」
実は、聴覚情報処理が苦手なASD(自閉スペクトラム症)の方にとって、日常の「口頭指示」は、今のトイレのアナウンスのように聞こえていることがあります。
動画では、当事者の方からの切実な声が紹介されました。
「話を聞けるか聞けないかと言われたら、聞けます。でも、すっごい集中しなきゃいけない。だから聞くだけでヘトヘトなんです」
「調子が良い時は分かるけど、疲れている時は言葉が頭に入ってこない。だから、いつも見える形(視覚支援)にしてほしい」
「言えば分かる」というのは、「本人が限界まで集中力を振り絞って、なんとか処理してくれている」状態かもしれません。
そんな綱渡りの状態では、他のことに使うエネルギーが残らないのです。
なぜ「楽にできる」ことが大事なのか?
視覚的支援の本当の価値は、「理解できる」こと以上に、「楽に(省エネで)理解できる」ことにあります。
これは私たちの仕事でも同じです。
報告書を手書きからパソコン入力に変えたり、便利なアプリを使ったりするのは、「楽をするため」ですよね。
楽になれば、疲労が減り、時間に「余裕」が生まれます。
ASDの方への支援も同じです。
視覚支援によって「聞くこと」へのエネルギー消費を減らせば、脳に「余裕」が生まれます。
その余裕があって初めて、
- 周囲の人とコミュニケーションをとる
- 新しい勉強にチャレンジする
- 自分の感情をコントロールする
といった、次のステップへの活動が可能になるのです。
まとめ:「ギリギリ分かる」から「余裕で分かる」へ
「言えば分かるからいい」は、相手に常に全力疾走を求めているのと同じかもしれません。
視覚的支援は、彼らの脳の負担を減らし、本来の力を発揮してもらうための「合理的配慮」であり、生活を豊かにするための「ツール」です。
障害福祉の研修動画サービス「スペシャルラーニング」では、
- 「脳の負担」を減らす、シンプルで分かりやすい視覚支援のコツ
- 年齢や特性に合わせたツールの選び方
- 「楽に伝わる」ことで問題行動が減った事例紹介
など、明日から使える実践的なノウハウを動画で配信しています。
「あのね、聞いて」と何度も言う前に、パッと見て分かる工夫を始めませんか?
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