【ASDの特性】「絵カードを見せたのに伝わらない」のはなぜ?独特な“注目の仕方”を知れば、支援はもっと届くようになる

【ASDの特性】「絵カードを見せたのに伝わらない」のはなぜ?独特な“注目の仕方”を知れば、支援はもっと届くようになる

「視覚支援が良いと聞いて絵カードを用意したのに、全然見てくれない…」
「目の前に置いてあるのに、なぜかスルーされてしまう」

現場でそんな経験はありませんか?
それは、彼らが「無視している」のではなく、そもそも「見えていない(気づいていない)」だけかもしれません。

今回は、ASD(自閉スペクトラム症)のある方の「独特な注目の仕方」と、それを踏まえた「伝わる見せ方の工夫」について解説します。

この記事は、スペシャルラーニングのSL185から抜粋して作成しています。

講師は、TEACCHプログラム研究会東北支部の代表であり、クロス・カンパニー(発達障害の方々のアートプロジェクトグループCROSS TEAM)アドバイザーであり、よこはま発達グループ 公認心理師/臨床心理士/精神保健福祉士である佐々木 康栄(ささき こうえい)先生です。

全体は見ない?「細部」にロックオンする特性

私たち(多数派)は、何かを見せられた時、まず「全体像」を把握しようとします。
しかし、ASDの方は「全体よりも細部(細かい部分)」に強烈に注目する傾向があります。

例えば、道路を歩いている時。
私たちは「車が来た(危険だ)」と全体を認識しますが、彼らは車のバンパーの「キラキラした反射」や、タイヤの「溝の模様」だけに注目してしまい、車という全体の危険性に気づけないことがあります。

つまり、支援者が「これを見て!」と絵カードを出しても、本人はカードの隅にある「小さな汚れ」「ラミネートの光」の方に注目してしまい、肝心の中身が伝わっていない可能性があるのです。

【実例】カゴは「横」ではなく「縦」に積む

また、「視野の範囲」にも特徴があります。
ある利用者さんの事例です。

作業のカゴを机の上に「横に3つ」並べて置きました。
すると、その方は真ん中の1つだけを終わらせて、「終わった!」と立ち上がってしまったのです。
両隣にもカゴがあるのに、気づいていませんでした。

これは、視界の端にある情報(周辺視野)に気づきにくい特性によるものです。

解決策:「縦」に積めば解決する

そこで支援者は、見せ方を変えました。
カゴを横に並べるのではなく、「縦に積み上げた」のです。

すると、一番上のカゴを取って終わらせると、自然と下のカゴ(次の課題)が目の前に現れます。
これなら、視線をキョロキョロ動かす必要がなく、「目の前のもの」に集中するだけで全ての課題を完了できました。

「見てくれない」と嘆く前に、「見えやすい位置(目の前)」に情報を置いてあげる工夫が大切です。

情報の「断捨離」が成功のカギ

ASDの方は、自分にとって「意味がある・興味がある」ものには瞬時に反応しますが、そうでない情報を無視する(フィルタリングする)のが苦手です。

壁にポスターがたくさん貼ってあったり、机の上に不要なものが置いてあったりすると、「どれが大事な情報か」が選別できず、混乱してしまいます。

支援のポイント

  1. 情報を減らす:見てほしいもの「だけ」を見せる(他は隠す・片付ける)。
  2. 魅力で対抗する:一度何かに集中すると切り替えが難しい場合は、言葉で止めるのではなく、「もっと魅力的な視覚情報(好きなおもちゃの写真など)」をスッと見せて、注意をこちらに向ける。

まとめ:「見てくれない」のではなく「見え方に合わせる」

彼らの「注目の仕方」は、私たちとは異なります。
だからこそ、私たちが彼らのカメラワーク(視点)を知り、そこに情報を映り込ませるような工夫が必要です。

「横じゃなくて縦にしてみよう」
「周りの物を片付けてみよう」

そんな小さな環境調整が、彼らの「できた!」につながります。

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