【虐待防止とメンタルヘルス】なぜ支援者は虐待をしてしまうのか?データから見る「ストレス」と「孤立」のリスク

「職員が生き生きと働き、利用者も幸せになるにはどうすればいいのか?」

都会のど真ん中、スペースにゆとりがない厳しい環境で施設運営を行う管理者の視点から、 「職員のメンタルヘルス」 と 「虐待防止」 の深い関係について解説します。
今回は、厚生労働省のデータに基づき、虐待が起きる背景と現状を整理します。

この記事は、スペシャルラーニングのSL174から抜粋して作成しています。
講師は、東京都障害者虐待防止・権利擁護研修運営委員会の委員であり、社会福祉法人 文京槐の会 は〜と・ピア2の松下 功一(まつした こういち)先生です。

1. 虐待の温床になる「ストレス」と「孤立」

虐待防止というと、研修やマニュアル整備に目が行きがちですが、根本的な要因の一つに 職員の状態 があります。

  • 過度のストレス:日々の支援における緊張や疲れ。
  • 孤立:悩みを誰にも相談できず、一人で抱え込んでしまう状態。

これらが重なった時、不適切なケアや虐待が起きやすくなります。
「悩みを共有し、支え合う風通しの良い職場」を作ることは、職員を守るだけでなく、利用者の生活の質(QOL)を守ることに直結します。

2. データで見る「障害者虐待」の実態(令和4年度)

厚生労働省が公表している「従業者等による障害者虐待の状況調査(令和4年度)」から、虐待の傾向を見てみましょう。

誰が、誰に、どんな虐待をしているのか?

  • 虐待者(職員側)
  • 性別:男性が約70%を占める。
  • 年齢:60歳以上の割合が高い。
  • 虐待の種別(上位)
  • 身体的虐待:52%
  • 心理的虐待:46.4%
  • 被虐待者(利用者側)
  • 性別:男性が63.6%。
  • 障害種別: 知的障害が72.6% と圧倒的に多い。
  • 行動障害の有無:行動障害のある方が33.5%。

このデータから、 「知的障害があり、行動障害を伴う利用者」への支援において、身体的・心理的な虐待が起きやすい という傾向が見えてきます。

3. なぜ虐待は起きるのか?「3つの要因」

同調査による「虐待の発生要因」の上位3つは以下の通りです。

  1. 教育・知識・介護技術等に関する問題(73.1%)
  • どう支援していいか分からない、技術不足。
  1. 倫理観や理念の欠如(58.1%)
  • プロとしての意識の低さ。
  1. 職員のストレスや感情コントロールの問題(57.2%)
  • イライラを抑えきれない、余裕がない。

特に注目すべきは、1位と3位の関係です。「強度行動障害などへの対応技術が不足している」ために支援がうまくいかず、それが「過度なストレス」となり、感情が爆発して虐待につながる……という負の連鎖が推測されます。

4. メンタルヘルスは「リスク管理」である

そもそもメンタルヘルスとは、単に病気ではない状態を指すのではありません。
「前向きな気持ちを保ち、意欲的に環境に適応し、生き生きとした生活を送れる状態」 のことです。

管理者にとって、職員のメンタルヘルスケアは法的なリスク管理でもあります。
長時間労働や過度なストレスで職員が精神疾患になった場合、安全配慮義務違反として 損害賠償責任 を問われる可能性もあります。

まとめ:技術と心の両輪で守る

虐待を防ぐためには、「やってはいけない」と禁止するだけでは不十分です。

  • 技術面:困難な行動に対する適切な支援技術を学ぶ。
  • 精神面:ストレスをマネジメントし、感情をコントロールする土台を作る。

この両輪を整えることが、結果として虐待のない職場づくりにつながります。

障害福祉の研修動画サービス「スペシャルラーニング」 では、

  • 職員のストレスマネジメントとセルフケア
  • 感情コントロール(アンガーマネジメント)の実践手法
  • 強度行動障害のある方への具体的な支援技術

など、データで示された「虐待リスクの高い要因」を解決するための研修動画を配信しています。
職員の心をケアし、虐待の芽を摘むために。ぜひご活用ください。

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