【きょうだい児の生きづらさ】「人に頼りなさい」と言われても…「良い子」で育った彼らが社会で躓く理由

【きょうだい児の生きづらさ】「人に頼りなさい」と言われても…「良い子」で育った彼らが社会で躓く理由

障害のある兄弟姉妹を持つ「きょうだい児」の方々は、一見するとしっかりしていて、自立しているように見えます。
しかし、社会に出て働き始めると、ある壁にぶつかり、深く悩むケースが後を絶ちません。

その壁とは、「人に頼る」「相談する」という行為です。

会社で上司から「もっと周りを頼りなさい」「困ったらすぐ相談しなさい」と言われても、どうすればいいか分からず、限界まで仕事を抱え込んで倒れてしまう……。
今回は、そんな「きょうだい児」特有の生きづらさの背景と、支援者ができるアプローチについて解説します。

この記事は、スペシャルラーニングのSL142から抜粋して作成しています。

講師は、一般社団法人ケアラーアクションネットワーク協会 代表理事の持田 恭子(もちだ きょうこ)先生リオン西多摩きょうだい会 代表の山下 のぞみ(やました のぞみ)先生です。

親が基準の「良い子」を演じすぎてしまう

なぜ、彼らは人に頼ることができないのでしょうか。
その原因は、幼少期の親子関係にあります。

子どもにとって親は世界の中心であり、「親に愛されたい」「認められたい」と願うものです。
障害のある兄弟姉妹がいる家庭では、親御さんはどうしても手のかかる方に意識が向きがちです。

そのため、きょうだい児は、

  • 「お母さんを困らせてはいけない」
  • 「自分はしっかりしなければならない」

と、親の期待に応えるために「良い子(手のかからない子)」を演じ続けます。
「あなたはできる子だから」という言葉は、裏を返せば「甘えてはいけない」という呪縛となり、自分の感情やSOSを封印する癖がついてしまうのです。

社会に出てからのギャップ。「頼る」って何?

家庭内で「我慢しなさい」「家の事情は外で言わないで」と育てられてきた彼らが、大人になり社会に出るとどうなるでしょうか。

職場では「報・連・相(報告・連絡・相談)」が求められます。
「もっと人を頼っていいんだよ」「意見を言いなさい」

これまで生きてきたルールと真逆のことを急に求められ、大混乱に陥ります。
「頼るってどうやるの?」
「弱音を吐いたら見捨てられるのでは?」

頼り方を知らないまま育った彼らは、自分のキャパシティを超えても「助けて」と言えず、心身の不調をきたしてしまうのです。これは「きょうだいあるある」であり、ヤングケアラーにも共通する深刻な課題です。

支援の基本は「解決」ではなく「傾聴」

では、支援者は彼らにどう接すればよいのでしょうか。
持田恭子先生と山下のぞみ先生は、「アドバイスや解決策は最後の最後でいい」と語ります。

最も重要なのは、「徹底的に話を聞く(傾聴する)」ことです。

ずっと感情を抑圧してきた彼らは、自分が何を思い、何がつらいのかを言葉にするのが苦手です。
支援者は、彼らがポツリポツリと本音を話し出すまで待ち、
「相談できないんです」と言う彼らに、
「今、私に話せていますよね。それが相談ですよ」
とフィードバックし、自信を持たせてあげることが大切です。

ピアサポート(交流会)は「言語化のトレーニング」

また、同じ立場の人たちが集まる「交流会(兄弟会)」も非常に有効です。
これは単なる愚痴を言い合う場ではありません。

  • 他人の話を聞いて「あ、自分もそう思っていた」と気づく。
  • モヤモヤしていた感情に名前(言葉)をつける。

交流会は、自分の気持ちを「言語化するトレーニングの場」なのです。
「自分は一人じゃない」という安心感の中で、仲間同士で解決策を見つけ出し、前に進んでいく。支援者はその「場」を用意し、見守るだけで十分なのです。

まとめ:きょうだい児に必要なのは「答え」ではなく「場所」

きょうだい児が求めているのは、正しいアドバイスではありません。
「どんな感情を持ってもいいんだ」「弱音を吐いてもいいんだ」と許される、心理的に安全な場所です。

支援者に求められるのは、何かを教えることではなく、ただそこにいて話を聞く「受容の姿勢」です。

障害福祉の研修動画サービス「スペシャルラーニング」では、

  • きょうだい児・ヤングケアラーへの傾聴テクニック
  • ピアサポート(当事者会)の運営ノウハウ
  • 家族全体のエンパワメント(力を引き出す支援)

など、対人援助職として必須のコミュニケーションスキルを動画で配信しています。
「話を聞くプロ」になるために。ぜひご活用ください。

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