【アドヒアランス】「薬を飲ませる」だけでは不十分。本人が治療に参加する「意思決定支援」の重要性

「熱があるから病院に行こう」と連れて行き、「薬が出たから飲んでね」と口に入れる。
知的障害のある方の医療支援において、これはごく当たり前の光景に見えます。

しかし、そこに「ご本人の意思」は介在しているでしょうか?
今回のテーマは、健康管理の中で最も難しく、かつ最も重要とされる概念「アドヒアランス(治療への参加)」について解説します。

この記事は、スペシャルラーニングのSL84から抜粋して作成しています。
講師は、独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園研究員/看護師の 根本昌彦(ねもと まさひこ)先生です。

1. 「飲みなさい」から「どうしたい?」へ

かつて医療の現場では、医師の指示通りに患者が従うこと(コンプライアンス)が良しとされていました。
しかし現在は、「患者自身が治療方針の決定に参加し、納得して治療を受けること(アドヒアランス)」が重視されています。

高血圧の薬の例

例えば、高血圧の薬を飲み忘れてしまう患者さんがいたとします。

  • 昔のやり方:「飲み忘れてはダメです!ちゃんと飲んでください」と指導する。
  • アドヒアランス:「どうなれば満足ですか?」「1日3回が難しいなら、効き目は少し落ちても1日1回の薬に変えましょうか?」と相談(すり合わせ)をする。

患者の生活スタイルや希望を聞き、実行可能な治療法を一緒に探るのが、今の医療のスタンダードです。

2. 知的障害のある方は「置き去り」になっていないか?

では、知的障害のある方の場合はどうでしょうか。

  • 何も説明されずに病院へ連れて行かれる。
  • 何の薬か分からないまま、口に入れられる。

ご本人の意思確認が全くなされないまま、「知らない間に薬を飲まされている」という状況になっていないでしょうか。
「具合が悪いね、病院に行こうか」「これは風邪を治すための薬だよ」「粉薬と錠剤、どっちなら飲みやすい?」
こうした対話や確認が抜け落ちてしまうケースが非常に多いのが現状です。

3. 医療における「意思決定支援」

福祉の現場では「意思決定支援」の重要性が叫ばれていますが、それは「住まい」や「仕事」選びだけではありません。
「自分の体に入れる薬」や「受ける治療」に関しても、意思決定支援は不可欠です。

  • 「なぜこの薬が必要なのか」を伝える工夫をする。
  • 「飲みたいか、飲みたくないか」「どう飲みたいか」を確認する。

講師も「健康管理の中で、このアドヒアランス(本人の意思確認)が一番難しい」と語ります。
難しいからこそ、意識的に取り組まなければ、ご本人は自分の体のことなのに「蚊帳の外」に置かれ続けてしまいます。

まとめ:納得して飲む一錠の重み

ただ薬を体に入れることと、本人が「治そう」と思って飲むことには、大きな違いがあります。

たとえ言葉での理解が難しくても、絵カードを使う、実物を見せる、表情を見るなどして、少しでも「治療に参加してもらう(アドヒアランスを高める)」アプローチを続けることが、尊厳ある健康支援につながります。

障害福祉の研修動画サービス「スペシャルラーニング」では、

  • 医療場面における「意思決定支援」の具体的な進め方
  • 病院受診や服薬の意味を伝えるための「視覚支援ツール」活用法
  • 本人の拒否があった時の対応と、医師への相談の仕方

など、最も難しいとされる「医療と本人の意思」をつなぐための実践的なノウハウを動画で配信しています。
「飲ませる支援」から「一緒に治す支援」へ変わるために。ぜひご活用ください。

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