【知的障害者の摂食機能】「丸呑み」は治る?舌の動きから見る発達の可能性

「うちの子、いつも丸呑みでヒヤッとする」
「よく噛まないから、お腹を壊しやすい」
障害のある方の食事介助で、こうした悩みを抱える方は多いのではないでしょうか。
これは単なる「癖」ではなく、実は「舌の機能障害(発達の未熟さ)」が原因かもしれません。
今回は、口腔衛生とも深く関わる「摂食(食べること)」の課題と、訓練によって機能が向上する可能性について解説します。
この記事は、スペシャルラーニングのSL85から抜粋して作成しています。
講師は、独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園研究員/看護師の 根本昌彦(ねもと まさひこ)先生です。
1. 知的障害者に多い「危険な食べ方」
知的・発達障害のある方には、以下のような特徴的な食べ方や口腔の問題が多く見られます。
- 歯ぎしり・偏った咀嚼:右ばかりで噛むなど、バランスが悪い。
- 早食い・丸呑み・詰め込み:窒息や誤嚥(ごえん)のリスクに直結する危険な行動。
- 舌の随意運動機能障害:飲み込む時に舌が前に出てしまう(本来は後ろに下がるべき)。

2. 舌が「前後」にしか動かない?
ある歯科医師の指摘によると、知的障害のある方の中には、体が大きく成長していても、舌の動きが赤ちゃんの段階(前後運動)に留まっているケースがあるそうです。
- 通常の発達:
- 赤ちゃん期:おっぱいを飲むために、舌を「前後」に動かす(吸啜)。
- 成長後:食べ物を左右の奥歯へ運ぶために、舌を「左右」に動かせるようになる。
- 課題のある方:
- 舌が「前後」にしか動かないため、食べ物を奥歯に運べず、噛むことができない。
- 結果として、噛まずに丸呑みしてしまう。
一見、口を動かしているように見えても、実は噛めていないのです。
3. 「1年半」の訓練で変わる未来
しかし、希望はあります。この舌の動きは、適切なトレーニングを行えば「治る(発達する)」可能性があるのです。
- 期間の目安:約1年半。
- 効果:舌が左右に動くようになり、噛んで食べられるようになる。
「1年半もかかるのか」と思うかもしれません。しかし、その後の人生何十年の食事リスクが減り、消化吸収が良くなり、食べる喜びが増すと考えれば、取り組む価値は非常に大きいです。
さらに、新しい動きを獲得することは、「脳の神経回路が増える」ことを意味します。
「たかが舌の運動」ですが、そこから脳への刺激が増え、本人全体の機能発達や元気につながる可能性を秘めています。
4. 「知識」はあるけど「実技」が足りない
最後に、支援者側の課題です。
食事形態(きざみ食、ペースト食など)に関する知識を本や座学で学んだ人は多いですが、「実習(直接指導)」を受けた経験がある人はわずか2割に留まります。
- 「知っている」のと「できる」のは別物。
- 目の前の利用者に合わせた指導ができているか、技術面に不安が残る現状があります。
まとめ:食べることは生きること。積極的な介入を
「丸呑みは危ないから気をつけて」で見守るだけでなく、一歩踏み込んでみましょう。
- 舌の動きを観察してみる。
- 専門家(歯科医師や言語聴覚士)に相談し、トレーニングを取り入れる。
- 職員自身が実習形式の研修を受ける。
これらを積み重ねることで、摂食機能は向上し、利用者の健康と生活の質は確実に高まります。
障害福祉の研修動画サービス「スペシャルラーニング」では、
- 今日からできる「早食い・丸呑み防止」の食事介助テクニック
- 舌の動きを育てる「お口の体操・マッサージ」の実践方法
- 食事形態(ペースト・きざみ)の正しい作り方と介助実習
など、知識だけでなく「技術」として使える摂食ケアのノウハウを動画で配信しています。
毎日の食事を、もっと安全で楽しい時間にするために。ぜひご活用ください。
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