【強度行動障害】薬の量はなぜ「多め」になる?「安心のための過剰投与」という課題

強度行動障害の支援において、切っても切り離せないのが「お薬(薬物療法)」の問題です。
今回は、強度行動障害支援者研修の資料(肥前医療センター・相田先生作成)にある概念図を基に、「なぜ薬の量は高止まりしてしまうのか?」という構造的な課題について解説します。

この記事は、スペシャルラーニングのSL84から抜粋して作成しています。
講師は、独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園研究員/看護師の 根本昌彦(ねもと まさひこ)先生です。

1. 「よくあるライン」と「目指したいライン」のギャップ

資料のグラフには、薬の量を示す2本の線が描かれています。

  • 赤い線(上の方)「よくあるライン」。実際の現場で多く見られる、比較的多めの処方量です。
  • 黄色い線(下の方)「実際に目指したいライン」。本来であればこの程度でコントロールしたいという、少なめの適正量です。

なぜ、本来目指すべき黄色い線ではなく、赤い線(多めの量)が常態化してしまうのでしょうか?

2. 365日の変化に「処方」が追いつかない

人間ですから、1年365日の中で調子の波は必ずあります。
イベントや季節の変わり目で不安定になり「薬を増やすべき時期」もあれば、落ち着いていて「減らしてもいい時期」もあります。

しかし、医療の現場でこの波に合わせて「タイムリーに薬の量を増減する」ことは非常に困難です。
今日調子が悪いから今日増やす、明日良いから減らす、というきめ細やかな調整は現実的ではありません。

「念のため」心理が働く

その結果、どうなるかというと…
「また調子が悪くなるかもしれないから、ちょっと多めに出しておこう
「減らして暴れたら困るから、このままでいこう

という、「安心のための多めの処方」が選択されがちになります。これが、赤い線(高用量)が続いてしまう最大の要因です。

3. 「加齢」とともに高まるリスク

薬の量が多いことは、若いうちはなんとかなっても、年齢を重ねると大きなリスクになります。

  • 代謝の低下:高齢になると薬の効き方が変わり、「効きすぎたり」「副作用が強く出たり」します。
  • 減薬の難しさ:長年多めに飲んでいる薬を、高齢になったからといって適切に減らしていくのは、非常に難しい調整が必要です。

「落ち着いているからよし」とするのではなく、将来を見据えた「適切な減量(適正化)」の視点を持つことが重要です。

まとめ:薬に頼りすぎない環境調整を

薬は本来、必要な時に必要な分だけ使うべきものです。
しかし、現場の事情や調整の難しさから「常に多め」になりがちであることを、支援者は知っておく必要があります。

医療任せにするのではなく、現場での支援(環境調整やコミュニケーション支援)によって本人の安定を図り、「薬を減らせる土台」を作っていくことが求められています。

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  • 強度行動障害の「医療連携」のポイントと医師への伝え方
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