【ポリファーマシー】「薬の飲みすぎ」は高齢者だけの問題ではない。知的障害者に潜むリスクと見直しの重要性

「薬をたくさん飲んでいるけれど、本当に全部必要なのだろうか?」
「若い頃からずっと同じ量だけど、年齢を重ねてもこのままでいいの?」

高齢者医療の世界でよく聞かれる「ポリファーマシー(多剤併用)」という言葉。
実はこれ、知的・発達障害のある方にとっても、非常に重要かつ見過ごされがちな問題です。

今回は、薬の「量」と「期間」が生むリスクと、見直しの必要性について解説します。

この記事は、スペシャルラーニングのSL84から抜粋して作成しています。
講師は、独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園研究員/看護師の 根本昌彦(ねもと まさひこ)先生です。

1. ポリファーマシーとは?「ただ多い」だけではない

ポリファーマシーとは、単に「薬の数が多いこと」だけを指すのではありません。

  • 多剤服用(たくさんの薬を飲んでいる)
  • 長期服用(長い期間飲み続けている)
  • 有害事象(副作用などのリスクが高まっている状態)

これらが重なり、「薬による害が、薬によるメリットを上回る恐れがある状態」を指します。

「薬=悪」ではない

誤解してはいけないのは、「薬を飲むこと自体が悪い」わけではないということです。
治療に必要な薬は、しっかりと飲み続けなければなりません。問題なのは、「漫然と出し続けられ、リスクが高まっているのに見直されていない状態」です。

2. 制度の隙間:障害者向けのガイドラインがない

厚生労働省は、高齢者向けに『高齢者の医薬品適正使用の指針』というガイドラインを出しており、国を挙げてポリファーマシー対策に取り組んでいます。

しかし、「知的障害者の医薬品適正使用」に関する国のガイドラインは、現時点ではありません。

国の指針がないからといって、障害のある方にポリファーマシーのリスクがないわけではありません。
人間の体である以上、薬を大量に長期間飲み続ければ、肝臓や腎臓への負担、ふらつき、眠気といった副作用リスクは、高齢者と同じように(あるいはそれ以上に)生じます。

3. 知的障害者こそ「見直し」が必要な理由

知的障害のある方は、精神的な安定やてんかん発作の抑制などのために、若い頃から多種類の薬を服用しているケースが非常に多く見られます。

  • 昔の処方のまま:20代の頃に決まった処方量が、代謝の落ちた50代、60代になってもそのまま維持されている。
  • 訴えられない:「なんとなくダルい」「ふらつく」といった副作用のサインを、本人が言葉で伝えられない。

その結果、「高齢になっても強力な薬を大量に飲み続けている」という、危険な状態が放置されやすいのです。

まとめ:年齢とともに「引き算」の視点を

「ずっと飲んでいるから大丈夫」ではなく、「長く飲んでいるからこそ、見直しが必要」です。
支援者やご家族が、「最近、副作用のような症状はないか?」「今の年齢や体調に、この量は合っているのか?」という視点を持ち、医師と相談していくことが重要です。

薬は健康を守るためのもの。それが逆に健康を害することのないよう、定期的なチェックを行いましょう。

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