【法律から学ぶ】身体拘束はなぜ禁止か?運営基準「第35条の2」が定める3つの義務と指針の作り方
【法律から学ぶ】身体拘束はなぜ禁止か?運営基準「第35条の2」が定める3つの義務と指針の作り方
身体拘束の廃止・適正化について、現場では「かわいそうだからやめよう」という感情論で語られることがありますが、それ以前に「法律で禁止されている行為」であることを、管理者は正しく理解しておく必要があります。
障害者総合支援法に基づく「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(運営基準)」において、身体拘束は明確に禁止され、適正化のための措置が義務付けられています。
今回は、法的根拠となる「第35条の2」を読み解き、事業所が整備すべき「3つの仕組み」と「指針(マニュアル)」の具体例について解説します。
この記事は、スペシャルラーニングのSL144から抜粋して作成しています。
講師は、元厚生労働省 障害福祉課・虐待防止専門官であり、日本社会事業大学 社会事業研究所 客員教授の曽根 直樹(そね なおき)先生です。

運営基準「第35条の2」のポイント
運営基準の第35条の2には、身体拘束について以下のように規定されています。
1. 原則禁止
「事業者は、利用者等の生命または身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束等を行ってはならない」
まずは「やってはいけない」が大原則です。
2. やむを得ず行う場合の「記録義務」
どうしても拘束せざるを得ない場合(切迫性・非代替性・一時性の3要件を満たす場合)でも、以下の4点を必ず記録しなければなりません。
- 態様(どのような拘束か)
- 時間(何時から何時までか)
- 心身の状況(その時、利用者はどういう状態だったか)
- 緊急やむを得ない理由(なぜ拘束以外に方法がなかったか)
記録がない拘束は、単なる虐待とみなされるリスクがあります。
事業所に課せられた「3つの義務(適正化措置)」
さらに同条の第3項では、身体拘束の適正化(廃止)を図るために、以下の3つの措置を講じることが義務付けられています。
① 委員会の定期開催と周知
「身体拘束適正化検討委員会」を定期的に開催すること。
重要なのは、委員会を開いて終わりではなく、「その結果を従業者(職員)に周知徹底すること」までが義務である点です。現場の職員が議論の内容を知らなければ意味がありません。
② 指針の整備
「身体拘束等の適正化のための指針」を作成し、備えておくこと。
③ 研修の定期実施
従業者に対し、適正化のための「研修」を定期的に実施すること。
これらが一つでも欠けていれば、基準違反となり、報酬の減算対象となります。「忙しくてできなかった」は通用しません。

【実例】「身体拘束適正化指針」には何を書くべきか?
では、義務化されている「指針」には具体的に何を盛り込めばよいのでしょうか。
動画内で紹介された社会福祉法人(リトルライフ)の目次構成例をご紹介します。
【身体拘束適正化指針の構成例】
- 身体拘束廃止に関する考え方(理念)
- 拘束は身体的虐待に該当するということ。
- 「利用者の尊厳ある生活を阻むもの」という定義。
- 身体拘束廃止に向けた体制
- 委員会の設置について。
- 拘束を行う場合の手順(記録、解除の判断など)。
- 身体拘束廃止に向けた各職種の役割
- 身体拘束廃止・適正化のための職員教育・研修
「理念」を明記する重要性
この指針の中で特に重要なのが、「1. 考え方」の部分です。
「拘束を安易に正当化せず、職員一人ひとりが廃止に向けた意識を持つ」という法人の強い意志(理念)を明文化することで、現場の迷いを断ち切ることができます。
まとめ:法律を守ることは、利用者の「自由」を守ること
憲法で保障された「自由権」に基づき、身体拘束は原則として許されない行為です。
事業所に求められているのは、精神論ではなく、委員会・指針・研修という「仕組み」で利用者の権利を守ることです。
しかし、一から指針を作ったり、毎回の研修資料を準備したりするのは大変な労力がかかります。
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