【障害福祉の自立支援】「自分で決めて」と言う前に。自己決定を不可能にしている「情報不足」の壁

【障害福祉の自立支援】「自分で決めて」と言う前に。自己決定を不可能にしている「情報不足」の壁

「今日は何をしたいですか?」
「どうしたいですか?」

利用者の意思を尊重しようと、このように問いかけることはよくあります。
しかし、もし利用者様が沈黙してしまったり、いつもと同じ返事しか返ってこなかったりする場合、それは「意志がない」からではありません。

「判断するための材料(情報)」を持っていないから、決められないだけなのです。

地域で暮らすこと、自分の人生を自分で決めること。
その大前提として、私たち支援者が絶対に忘れてはいけない「情報を分かりやすく伝える援助」について解説します。

この記事は、スペシャルラーニングのSL32から抜粋して作成しています。

講師は、障害のある人と援助者でつくる日本グループホーム学会の副代表であり、社会福祉法人ロザリオの聖母会 なざれの家あさひの所長の荒井 隆一(あらい りゅういち)先生です。

「知らない」ことは「決められない」

例えば、私たちがレストランに入った時、メニューを見せられずに「さあ、注文を決めてください」と言われたらどうでしょうか?
何があるのか、値段はいくらなのか、何も分からなければ注文のしようがありません。

障害のある方の生活も同じです。

  • 地域のルールやイベントを知らない
  • 明日、誰が支援に入ってくれるのか知らない
  • 今度の休みにどんな選択肢があるのか知らない

この状態で「自分で考えて決めて」と言うのは、あまりに酷な話です。
グループホームや地域生活の主役は、あくまで入居者(利用者)本人です。
主役が自分の人生をコントロールするためには、まず「状況を知る権利」が保障されなければなりません。

具体的に「何を」伝えればいい?

では、生活の中でどのような情報を共有すべきなのでしょうか。
動画では、以下のような具体的なシーンが挙げられています。

1. 社会・地域の情報

  • 回覧板や新聞: 一緒に読み、地域の出来事や最近のニュースを分かりやすく伝えます。「社会と繋がっている」感覚を持つために重要です。
  • 選挙: 「投票に行きますか?」と聞く前に、何の選挙で、どんな人が立候補しているのかを伝えます。

2. 住まい・環境の情報

  • 予定の変更: 「明日は見学の人が来ます」「来週は工事が入ります」など、生活の場に起きる変化を事前に伝えます。これは不安の軽減にも繋がります。

3. 余暇・楽しみの情報

  • 休日の過ごし方: ただ口頭で聞くのではなく、情報誌やパンフレットを一緒に見ながら、「ここに行くとこんなことができますよ」と選択肢を提示します。

4. 支援に関する情報

  • スタッフの予定: 「明日の外出支援は誰にお願いするか」を一緒に考えたり、スケジュールの相談・確認を行ったりします。

「一方的な決定」を卒業し「相談」へ

支援者が良かれと思って、「休日はあの公園に行こう」「選挙は難しいから行かなくていいだろう」と勝手に決めてしまっていませんか?

自立支援において大切なプロセスは以下の通りです。

  1. 情報を分かりやすく伝える(選択肢の提示)
  2. 了解を得る(本人の意思確認)
  3. 相談しながら進める(プロセスの共有)

ご本人にとって分かりやすい方法(言葉、写真、実物など)で情報を届け、「相談相手」になりながら生活を作っていくこと。
これができて初めて、「自分の暮らし」と言えるようになります。

まとめ:情報格差をなくすのが支援者の役目

動画の最後にあるこの言葉は、私たち支援者に重く響きます。

「自己決定のために情報を分かりやすく伝えるという援助ができていないから、障害のある人の自立が進まないのだと言えます」

自立が進まないのは、ご本人の能力の問題ではなく、私たちの「伝え不足」が原因かもしれません。

「今日はこの情報を伝えてみよう」
「このパンフレットを見せてみよう」

その小さな情報の架け橋が、利用者様の「こうしたい!」という意思を引き出し、自立への大きな一歩となります。

障害福祉の研修動画サービス「スペシャルラーニング」では、

  • 知的障害のある方に伝わる「情報提供」のテクニック
  • 意思決定支援ガイドラインに基づいた具体的な支援プロセス
  • 選挙や契約など、社会参加を支えるためのサポート術

など、利用者の「知る権利」と「決める力」を支えるための実践スキルを動画で配信しています。
真の自立支援を実現するために。ぜひご活用ください。

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