【金銭管理の支援】「計算できないからスタッフが管理」でいいの?お金を自分で使う=人生を選ぶということ

「この利用者さんは計算が苦手だから、お小遣い以外はスタッフが管理しよう」
「難しいことは分からないだろうから、必要なものだけ渡せばいい」
グループホーム(共同生活援助)の現場で、このような金銭管理が行われていませんか?
確かに、トラブルを防ぐための管理は大切です。しかし、お金の管理を取り上げることは、その人の「生き方を選ぶ権利」を取り上げることにもなりかねません。
今回は、単なる家計簿の話ではない、グループホームにおける「生活費管理の本当の意味」について解説します。
この記事は、スペシャルラーニングのSL32から抜粋して作成しています。
講師は、障害のある人と援助者でつくる日本グループホーム学会の副代表であり、社会福祉法人ロザリオの聖母会 なざれの家あさひの所長の荒井 隆一(あらい りゅういち)先生です。
1. お金を使うことは「どう暮らしたいか」を決めること
私たち自身、生活を組み立てる時に何を考えるでしょうか?
- 「美味しいものを食べに行きたい」
- 「趣味のグッズを揃えたい」
- 「少し高くても、綺麗な部屋に住みたい」
自分の収入の中で、何に重点を置くか。その選択こそが「その人らしい暮らし」を作っています。
これは、障害のある方も全く同じです。
たとえ計算が苦手でも、重度の障害があっても、「こう暮らしたい」という希望(ニーズ)がない人はいません。
生活費の使い方を決めるのは、あくまで入居者本人です。
支援者が管理しやすいようにコントロールするのではなく、「本人が決定権を持つ」という原則を忘れてはいけません。

2. 「分からない」と決めつけず、全体像を見せる
よくあるケースが、「難しいことは分からないだろう」と決めつけられ、数百円のお小遣いだけを渡されているパターンです。
家賃や光熱費、食費など、生活にかかる「全体のお金」を知らされていないことがあります。
これでは、自分の生活の規模感がつかめず、将来の希望を描くこともできません。
支援者の役割
- 全体を可視化する: 現金だけでなく、口座引き落とし分も含めた「生活費全体」について、分かりやすく伝える工夫をする。
- 一緒に確認する: 「あなたの収入はこれくらいで、生活にこれくらい必要です」と、事実を共有する。
「自分のお金で生活が成り立っている」と実感できる機会を保障することが大切です。
3. その人に合った「管理スタイル」を一緒に作る
金銭管理の方法に、万人に通じる正解はありません。
「全部自分でやる」か「全部任せる」かの二択ではなく、その人の状況に合わせたオーダーメイドの支援が必要です。
ケース別の関わり方
- 生活経験が少ない人
「どう暮らしたいか」のイメージが湧かない場合があります。
「こんな使い方もできるよ」「ここにお金を使うと楽しいよ」と、選択肢を提案しながら一緒に考えます。 - 計算や管理が苦手な人
「どこまでなら自分でできるか」「どこを支援すれば管理しやすくなるか」を話し合います。
(例:封筒分けをする、カレンダーに貼る、アプリを使うなど) - 長く暮らしている人
年齢や状況の変化に合わせて、やり方を定期的に見直すことも必要です。
4. 失敗してもいい。「試行錯誤」が自立への道
最初から完璧にお金を管理できる人はいません。
グループホームでの暮らしは、自分のお金の使い方を自分で決める生活です。
- 「使いすぎてしまった」
- 「欲しいものが買えなかった」
そんな失敗も含めて、「自分で生活を築き上げている」という実感になります。
支援者は先回りして管理するのではなく、「どうすれば自分でできるか」を本人と粘り強く話し合い、試行錯誤を続けるパートナーであり続けてください。
まとめ:財布の紐(ひも)は、人生の舵(かじ)
金銭管理を支援することは、単にお金の計算を合わせることではありません。
その人が自分の収入の範囲で、最大限に自分らしい人生を楽しむための「自己決定支援」です。
「管理してあげる」から「一緒に考える」へ。
お金を通じて、利用者の「願い」に耳を傾けてみましょう。
障害福祉の研修動画サービス「スペシャルラーニング」では、
- 金銭管理における「意思決定支援」のガイドライン
- トラブルを防ぎつつ自立を促す金銭管理の契約書・同意書の作り方
- 知的障害のある方にも伝わる「お金の使い方の教え方」
- 成年後見制度の基礎知識と活用事例
など、権利擁護の視点に立った、実践的な金銭管理サポートのノウハウを動画で配信しています。
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