【金銭管理の壁】「使えない人」と「使いすぎる人」への支援法。グループホームで育む“お金と生活”の関係

「お給料が入ったその日に、全部使い切ってしまう」
「逆にお金を使うことに消極的で、楽しみを持てていない」

グループホーム(共同生活援助)で生活費の管理を支援していると、このような両極端な課題に直面することがあります。
なぜ、入居者様はお金の使い方が極端になってしまうのでしょうか?

今回は、その背景にある「経験不足」という根本原因と、タイプ別の具体的なアプローチ方法について解説します。

この記事は、スペシャルラーニングのSL32から抜粋して作成しています。

講師は、障害のある人と援助者でつくる日本グループホーム学会の副代表であり、社会福祉法人ロザリオの聖母会 なざれの家あさひの所長の荒井 隆一(あらい りゅういち)先生です。

1. なぜ、うまくいかないのか?原因は「経験の空白」

私たち支援者を含め、多くの人は子供の頃から段階的にお金の使い方を学んできました。

  1. 子供時代: 少ないお小遣いで、お菓子やおもちゃを買う(失敗も経験する)。
  2. 就労後: 給料をもらい、趣味や交際費に使う範囲を広げる。
  3. 自立後: 親元を離れ、家賃や光熱費など「生活にかかる費用」を払う責任を知る。

このように、何十年もかけて「遊びのお金」と「生活のお金」のバランス感覚を養ってきました。
しかし、施設や親元からグループホームに入居した方の多くは、この「自分のお金で生活を回す経験」をしたことがありません。

いきなり「生活費のすべてを管理しなさい」と言われても、土台となるノウハウがないため、混乱してしまうのは当然なのです。

2. ケース①:「お金を使えない人」への支援

一見、無駄遣いをしないので問題ないように見えますが、実は「どう使っていいか分からない」「欲しいものがない」という課題を抱えているケースです。

これまでの生活経験が乏しく、「お金を使う=楽しい、生活が豊かになる」という実感を持てていない可能性があります。

支援のポイント:生活の豊かさを広げる

節約することだけが正解ではありません。支援者は、以下のような経験を一緒に積み重ねていく必要があります。

  • 自分で選ぶ体験: 支給された服ではなく、自分で店に行き、好きな服を選んで買う。
  • 趣味の開拓: 「推し活」や「美味しいもの」など、心がワクワクすることにお金を使う。

「お金を使うと、毎日がこんなに楽しくなるんだ」という実感(一コマ一コマ)を増やしていくことが、結果として主体的な金銭管理への意欲に繋がります。

3. ケース②:「衝動的に使ってしまう人」への支援

「欲しい!」と思ったら後先考えずに使ってしまい、家賃や食費が足りなくなるケースです。
支援者としては頭を抱える問題ですが、まず肯定すべきなのは「買いたい・欲しいという意欲(欲望)」そのものは、生きるエネルギーであり、とても大切なものだということです。

支援のポイント:「今の暮らし」を好きになってもらう

「無駄遣いはダメ!」と叱るだけでは、衝動は止まりません。
ブレーキをかけるために必要なのは、「この生活を守りたい」という気持ちです。

  1. 今の暮らしを充実させる: 「グループホームでの生活は楽しい」「ここが自分の居場所だ」と感じてもらう。
  2. 因果関係を伝える: 「ここに住み続けるためには、家賃を払う必要がある」と気づいてもらう。
  3. 自制心が生まれる: 「ここでの生活を失いたくないから、お金を残しておこう」という動機が生まれる。

「我慢」を強いるのではなく、「大切な場所を守るため」というポジティブな理由付けができるようサポートしましょう。

まとめ:金銭管理=生活全体を考えること

金銭管理の課題は、単なる計算ドリルの問題ではありません。
「その人がどんな人生を歩んできたか」「これからどう暮らしていきたいか」という、生活全体を考える課題そのものです。

  • 使えない人には、「使う喜び」を。
  • 使いすぎる人には、「守りたい生活」を。

それぞれの背景に合わせたアプローチで、焦らずじっくりと経験値を積み上げていくことが大切です。

障害福祉の研修動画サービス「スペシャルラーニング」では、

  • 金銭管理が苦手な方への段階的なトレーニング方法
  • トラブルを未然に防ぐための金銭管理契約書のひな形
  • 買い物同行や余暇支援を通じた「生活の質(QOL)」向上アプローチ
  • 成年後見制度との連携と支援者の役割

など、お金を通じて利用者の自立と幸せを支えるための実践的なノウハウを動画で配信しています。
数字の管理だけでなく、人生の管理をサポートするために。ぜひご活用ください。

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