【健康管理の基本】「痛い」と言えない利用者をどう守る?“いつもと違う”を見逃さない観察と記録の技術

「なんだか元気がない気がするけれど、熱はないし大丈夫かな?」
「本人は何も言わないけれど、食欲が落ちている気がする…」

グループホームなど施設での生活において、利用者の健康を守ることは最優先事項の一つです。
通常であれば、体調不良は本人が一番よく分かりますが、障害特性によって「自分の不調をうまく言葉で伝えられない人」も多くいらっしゃいます。

今回は、言葉にならないSOSをキャッチするために支援者が持つべき「観察の視点」と、チームで命を守るための「記録の重要性」について解説します。

この記事は、スペシャルラーニングのSL32から抜粋して作成しています。

講師は、障害のある人と援助者でつくる日本グループホーム学会の副代表であり、社会福祉法人ロザリオの聖母会 なざれの家あさひの所長の荒井 隆一(あらい りゅういち)先生です。

1. 原則は「本人の訴え」。でも、それだけでは足りない

健康管理の基本は、あくまで本人の訴え(主訴)に基づいて対応することです。
しかし、痛みや苦しみを我慢してしまったり、感覚が鈍麻していて気づかなかったり、そもそも言語化が難しい利用者様の場合、待っているだけでは手遅れになるリスクがあります。

そこで重要になるのが、「非言語情報の観察」です。

「いつもと違う」を見抜くチェックポイント

言葉以外のサインから、普段との違い(変化)を感じ取ることがプロの観察眼です。

  • 表情: 険しい顔をしていないか? ぼーっとしていないか?
  • 声の様子: 元気がない、奇声を上げている、いつもより静か。
  • バイタル: 体温、脈拍、血圧の変化。
  • 食事量: 残食がある、食べるスピードが遅い、飲み込みにくそう。

「なんとなく変だな」という支援者の直感は、意外と当たっているものです。その違和感を放置せず、検温や問診に繋げましょう。

2. 入居時に「過去」を知っておく

適切な健康管理を行うためには、その人の「現在」だけでなく、「過去(ヒストリー)」を知っておくことが不可欠です。

入居時には、本人やご家族、以前の支援者から、「生まれてから現在に至るまでの健康に関する経過(生育歴・既往歴)」を必ず聞き取っておきましょう。

  • かかりやすい病気はあるか?
  • 過去に大きな手術をしたか?
  • アレルギーや服薬の状況は?

「この人は季節の変わり目に喘息が出やすい」といった過去のデータがあれば、事前の対策が可能になります。

3. 「記録」は利用者を守るバトン

グループホームでは、複数のスタッフが交代で支援に入ります。また、長い入居生活の間には、担当職員が退職して代わることもあります。
その時、個人の記憶だけに頼った管理をしていると、情報が途切れ、適切な医療ケアができなくなる恐れがあります。

記録に残すべきもの

  1. 日々の経過: 「〇月×日、食欲低下あり」など、毎日の観察記録。
  2. 通院履歴: どの病院で、どんな診断を受け、どんな薬が出たか。
  3. 写真アルバム: 文字だけでなく、写真を残すことも有効です。「数年前と比べて痩せたな」「歩き方が変わったな」といった経年変化(老化や身体機能の低下)を客観的に把握するツールになります。

スタッフが変わっても、誰が見ても同じ質の健康管理ができるよう、「情報のバトン(記録)」を確実に繋いでいくことが、利用者の命を守ることに直結します。

まとめ:観察と記録で「声なきSOS」を拾う

健康管理とは、病院に連れて行くことだけではありません。
日々の生活の中で、「いつも通りかな?」と目を配り、些細な変化をチームで共有し続けることこそが、最大の予防医療です。

「痛い」と言えない人の痛みに気づくために。
今日の支援記録には、バイタルの数値だけでなく、あなたが感じた「ちょっとした変化」もぜひ書き残してください。

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