【医療的ケア】「ダメ!」と言っても伝わらない?食事制限を“納得”してもらうための伝え方と工夫

「糖尿病だから、甘いものは控えて」
「血圧が高いから、塩分はダメ」

医師からの指示とはいえ、好きなものを我慢するのは誰にとってもつらいことです。
知的障害などにより理解力が弱い方の場合、「なぜ我慢しなければならないのか」が分からず、隠れ食いや拒食などのトラブルに発展することもあります。

今回は、医療上どうしても必要な食事制限(制約)について、「いかに本人に納得してもらい、前向きに取り組んでもらうか」というアプローチ方法について解説します。

この記事は、スペシャルラーニングのSL32から抜粋して作成しています。

講師は、障害のある人と援助者でつくる日本グループホーム学会の副代表であり、社会福祉法人ロザリオの聖母会 なざれの家あさひの所長の荒井 隆一(あらい りゅういち)先生です。

1. 「健康でいたい理由」を一緒に探す

人は、納得できない苦痛には耐えられません。
制限を守ってもらうためには、まず「なぜ制限が必要なのか」という動機づけが不可欠です。

① 体の状態を知る

「お医者さんが言ったから」だけでは弱いです。
「今、あなたの体の中で何が起きているのか」を、本人が分かる言葉で説明する必要があります。

② 健康でいることの「メリット」を感じる

ここが最も重要です。
「病気になったら、大好きな旅行に行けなくなる」
「入院したら、仲良しのスタッフに会えなくなる」
「倒れたら、お母さんが悲しむ」

「今の楽しい生活を失いたくない」という気持ちこそが、我慢するエネルギーになります。
逆説的ですが、「今のグループホームでの生活が、守るに値するほど楽しいものであるか」が、健康管理の成否を分けるのです。

2. 「勉強会」スタイルで一緒に学ぶ

医師の説明は専門用語が多く、難解な場合があります。
支援者は、医師と本人の間の「通訳」になりましょう。

  • 噛み砕いて話す: 医師の話で分からなかった部分を、ゆっくり説明し直す。
  • 図解本を使う: イラストの多い健康本や、分かりやすい資料を使って説明する。
  • 一緒に学ぶ姿勢: 「教える」のではなく、「〇〇さんと一緒に私も勉強しよう」というスタンスで寄り添うことが、本人のやる気を引き出します。

3. 「砂糖の量」を目で見せる!体験型アプローチ

言葉での説明には限界があります。
「砂糖が多いからダメ」と言うよりも、視覚や体験に訴える方が、強烈に印象に残ります。

おすすめの実験例

  • 砂糖の可視化:
    普段飲んでいる清涼飲料水や缶コーヒーに含まれる砂糖を、実際に計量して見せる。「こんなに入ってるの!?」と驚きを与える。
  • 甘さの体験:
    その量の砂糖を水に溶かして飲んでみる。「うわ、甘すぎる!」という体感を通じて、普段どれだけ糖分を摂っているかを実感してもらう。

4. 外部の専門家を巻き込む

ホームの中だけで解決しようとせず、地域の資源を活用するのも有効です。

  • 保健所の活用:
    地域の保健師さんに依頼して、障害のある方向けの「健康教室」を開いてもらう。
  • 外部研修:
    「先生(専門家)」から話をしてもらうことで、いつもと違う説得力が生まれることがあります。

まとめ:禁止するのではなく、未来を守る

「ダメ!」「我慢して!」と制約を押し付けるだけでは、お互いにストレスが溜まる一方です。

  • 「なぜ必要なのか」を具体的に見せる。
  • 「守りたい生活(楽しみ)」とセットで伝える。

「あなたにずっと元気でいてほしいから、一緒に頑張ろう」というメッセージを伝え続けることが、納得への第一歩です。

障害福祉の研修動画サービス「スペシャルラーニング」では、

  • 知的障害のある方に伝わる「病気・体の仕組み」の説明ツール
  • 楽しみながら健康意識を高める「食育プログラム」の実践例
  • 医療連携が必要なケースにおける「医師との付き合い方」

など、医療的な制約をポジティブな生活習慣に変えていくための具体的な支援ノウハウを動画で配信しています。
我慢ではなく、健康への前向きな一歩を支えるために。ぜひご活用ください。

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