【自己理解支援】「ズレ」を指摘するのは逆効果?焦らず時間をかける「経験と振り返り」のサイクル

就労支援において、最も難しく、かつ重要なのが「自己理解」です。
「自分は何が得意で、何が苦手か」
「どんな配慮があれば働けるか」
これを利用者自身が理解していないと、ミスマッチや早期離職につながります。
しかし、支援者が「あなたはこうですよ」と教え込むものではありません。
今回は、「ゆっくり時間をかける」ことを大前提とした、自己理解支援の正しい進め方とコツについて解説します。
この記事は、スペシャルラーニングのSL37から抜粋して作成しています。
講師は、NPO法人ジョブコーチ・ネットワークの理事であり、日本職業リハビリテーション学会の近畿ブロック代表理事であり、社会福祉法人北摂杉の子会ジョブジョイントおおさかの所長の星明 聡志(ほしあき さとし)先生です。
1. 「2年」で終わらせようと焦らない
まず、支援者のマインドセットとして重要なのは、「自己理解には時間がかかる」と腹をくくることです。
- 人生単位: 自分のことを深く知る作業は、5年、10年とかかることも珍しくありません。
- 支援期間の限界: 就労移行支援の利用期間は原則2年ですが、この期間内で「完璧」を目指して急かすのはNGです。
焦らせると、本人は混乱し、自信を失います。「長い人生の中で、少しずつ進めていけばいい」というスタンスで寄り添うことが第一歩です。

2. 「つもりの自分」と「他人から見た自分」のズレをどう埋める?
特に発達障害のある方は、客観視が苦手な傾向にあり、以下のズレが生じやすいです。
- 「つもりの自分」: 自分ではできているつもり。
- 「他者から見た自分」: 実はできていない、ズレている。
❌ やってはいけない支援
このズレに対して、「あなたは自分ではできていると思っているけど、実際はできていませんよ」と言葉で指摘する(ダメ出しする)のは逆効果です。信頼関係が崩れるだけで、理解は進みません。
⭕️ 効果的な支援
「具体的な経験」+「ポジティブなフィードバック」で気づきを促します。
- 「こうやってみたら、うまくいきましたね」
- 「この道具を使ったら、ミスがなくなりましたね」
「できない」を突きつけるのではなく、「どうすればうまくいくか(成功体験)」を共有することで、自然と「あ、自分はこういう工夫が必要なんだ」という気づき(自己理解)についてもらいます。
3. 経験を学びに変える「4つのサイクル」
自己理解は、以下のプロセスを何度も繰り返すことで深まっていきます。
- ヒアリング: 現在の本人の認識(気づき)を聞く。
- 経験(Action): 作業や実習など、実際にやってみる。
- 振り返り: 「どうだったか」を日誌などで一緒に確認する。
- まとめる: 気づいたことをプロフィール表やサポートカードに書き込む。
このサイクルを回すことで、本人の認識が「なんとなく」から「確信」へと変わり、無理なく働ける形(ポジティブな自己理解)が見えてきます。
4. アセスメント情報は「押し付けない」
支援者はアセスメントを通じて、「この人はここが課題だ」という情報をたくさん持っています。
しかし、それをそのまま本人にぶつけてはいけません。
- × 押し付け: 「アセスメントの結果、あなたはこれが苦手です」
- ○ 活用: 「(苦手な部分をカバーする経験を用意して)…やってみてどうでした? 意外とこの方法だと楽でしたね」
支援者が持つ情報は、「本人が自分で気づくための環境設定」のために裏で活用するものです。
あくまで主役は本人。「自分で気づいた」と思えるように黒子に徹するのが、プロの技です。
まとめ:信頼関係という土台があってこそ
自己理解支援とは、本人と支援者の「共同作業」です。
そこには、絶対的な信頼関係が不可欠です。
「この人は自分のダメなところを探しているのではなく、うまくいく方法を一緒に探してくれている」
そう本人に思ってもらえる関係性の中で、ゆっくり、じっくりと、その人らしい働き方を見つけていきましょう。
障害福祉の研修動画サービス「スペシャルラーニング」では、
- 自己理解を促す「振り返り日誌」のフォーマットとコメント例
- 「ズレ」に気づいてもらうためのフィードバックの言い回し
- 失敗体験を成功体験(学び)に変えるリフレーミング技術
- 期間内に自己理解が進まないケースへの対応事例
など、本人の心を折らずに、着実に自己理解を深めていくための具体的な支援スキルを動画で配信しています。
焦らず、共に歩む支援を実現するために。ぜひご活用ください。
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