【発達障害と環境調整】「仕事ができない」のは本人のせい?働きやすい職場の「理想」と「教える技術」

「何度言っても伝わらない」
「教えてもすぐに忘れてしまう」

現場でそんな壁にぶつかった時、つい「本人の能力不足」だと結論づけていませんか?
しかし、環境との相互作用の視点で見ると、それは「教え方」や「環境」が本人に合っていないだけかもしれません。

今回は、特に発達障害のある方が能力を発揮しやすい「理想の職場環境」と、パフォーマンスを劇的に変える「分かりやすく教える技術」について解説します。

この記事は、スペシャルラーニングのSL37から抜粋して作成しています。

講師は、NPO法人ジョブコーチ・ネットワークの理事であり、日本職業リハビリテーション学会の近畿ブロック代表理事であり、社会福祉法人北摂杉の子会ジョブジョイントおおさかの所長の星明 聡志(ほしあき さとし)先生です。

1. 働きやすい職場の「理想」とは?

「働きやすい環境」といっても、人によって感じ方は様々です。
ここでは、発達障害や認知機能に特性のある方にとって、どのような環境が理想的か(=パフォーマンスが出やすいか)を、物理面と対人面で整理します。

① 物理的な環境:キーワードは「見える化」と「クールダウン」

  • 視覚的な構造化(見える化):
    スケジュール、手順書、マニュアルなどが文字や図で示されていること。「見て分かる」環境は安心感を生みます。
  • クールダウンの場所:
    パニックになったり、気持ちが昂ったりした時に、一人になれる場所や時間を確保できること。
  • 柔軟な対応:
    一律のルールで縛るのではなく、個別の事情(感覚過敏など)に合わせて柔軟に対応してくれること。

② 人的な環境:キーワードは「肯定的フィードバック」

  • ポジティブな関わり:
    「ダメ出し」や批判的な言葉ではなく、「こうすると良いですよ」という具体的な提案や、「ここまではできていますね」という肯定的なフィードバックがあること。
  • 一人ひとりを大切にする:
    本人の存在を認め、尊重してくれる風土があること。

アセスメントの際は、この「理想」と「今の職場(現状)」を照らし合わせ、どこにギャップがあるかを確認することが重要です。

2. 「教え方が下手」だと、誰だって仕事はできない

現場でよくある「仕事ができない」という評価。
実は、「伝える側の教え方が下手(本人に合っていない)」であるケースが非常に多いです。

教え方ひとつで、本人の理解度は大きく変わります。

× 良くない教え方

  • 口頭だけで伝える: 「あれやって、これやって」と言葉だけで指示する。(ワーキングメモリが弱いと覚えきれません)
  • 一度にたくさん教える: 情報を詰め込みすぎてパンクさせる。
  • ざわざわした場所で教える: 周囲の音や動きが気になって集中できない。

○ 分かりやすい教え方(技術)

  • 視覚的に伝える: メモ、写真、実物を見せながら教える。
  • スモールステップ: 作業を細かく分解し、一つずつ教える。
  • 環境を整える: 静かで集中できる場所で、落ち着いて教える。
  • 理解度・特性に合わせる: 本人のペースや得意な入力方法(視覚優位など)に合わせる。

「本人が理解していない」と感じたら、本人の能力を疑う前に、「自分の教え方は視覚的だったか?」「環境は適切だったか?」を振り返る視点が不可欠です。

まとめ:環境が変われば、人は変わる

アセスメントとは、本人を評価するだけではありません。
「環境(職場・教え方)」を評価することでもあります。

「理想の環境」と「適切な技術」が揃ったとき、今まで「できない」と思われていた人が、驚くような成果を出すことがあります。
支援者や企業担当者は、その環境を整えるコーディネーターとしての役割を担っているのです。


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