【行動観察の極意】「できる・できない」を勝手に決めない!企業が求める“芽生え”を見つける視点

「事業所ではうまくできているけれど、企業実習に行くとどうだろう?」
「このスキルだと、就職はまだ無理かもしれない…」
利用者の様子を観察・記録する「行動観察」は、アセスメントの要です。
しかし、支援者が「自分たちの基準」で評価してしまうと、利用者の可能性(就職のチャンス)を潰してしまうことになりかねません。
今回は、事業所内と企業内での「見るべきポイント」の違いと、就職活動で最もアピール材料となる「芽生え(将来性)」の見つけ方について解説します。
この記事は、スペシャルラーニングのSL37から抜粋して作成しています。
講師は、NPO法人ジョブコーチ・ネットワークの理事であり、日本職業リハビリテーション学会の近畿ブロック代表理事であり、社会福祉法人北摂杉の子会ジョブジョイントおおさかの所長の星明 聡志(ほしあき さとし)先生です。
1. 事業所と企業、見るべき場所は違う
行動観察は、環境によって目的が変わります。
事業所(就労移行支援やA・B型など)と、企業(実習・インターンシップ)では、以下のポイントを使い分けましょう。
① 事業所の中で見るポイント
- 基本的な職業スキル: パソコン、手作業などの習熟度。
- 【重要】休憩時間の過ごし方:
作業中は緊張して頑張れても、休憩時間にどう振る舞うか(孤立していないか、リフレッシュできているか)に、その人の素の状態や課題が現れます。
② 企業の中で見るポイント
ここで最もやってはいけないのが、「支援者や本人が勝手に『できる・できない』を決めること」です。
- 基準は企業にある:
「ここまでやってほしい」という要求水準(期待値)は、企業が決めるものです。 - 採用判断は企業がする:
「このレベルでは採用されないだろう」と支援者が先回りして諦めてはいけません。
企業内での行動観察の役割は、ジャッジすることではなく、「今の事実を客観的に把握すること」です。企業の基準に対して、今どうなのかを冷静に記録しましょう。
2. 「合格・不合格」よりも大切な「芽生え」
スキル(技能)を評価する際、白か黒かで判断していませんか?
職業評価の視点では、以下の3段階で捉えることが重要です。
- 合格(自立): 一人でできる。支援が不要。
- 不合格: できない。
- 芽生え(めばえ): 今は完璧ではないが、伸びしろがある。
企業は「芽生え」を買う
就職活動において、企業が見ているのは「現時点で完璧か」だけではありません。
「うちの会社に入って、これから成長してくれそうか(将来性)」を重視して採用を決断します。
だからこそ、行動観察では「芽生え(=できそうなこと、伸びそうなこと)」に着目してください。
- 「今は時間がかかるけど、手順は覚えている」
- 「声かけがあれば、正確にできる」
この「芽生え」こそが、企業への最大のアピールポイントになります。
「不合格」は工夫のチャンス
「不合格(できない)」部分は、無視しても構いません。あるいは、「練習してできるようにする」のではなく、「どう補えば(サポート・道具があれば)できるようになるか」という視点で観察しましょう。

3. 「学び方のクセ」と「好き」を見抜く
最後に、その人自身の特性に関する観察ポイントです。
① 学習スタイル(学び方)
同じ障害診断名でも、学び方は一人ひとり違います。
- 「見て覚えるのが得意」
- 「書いて覚えるのが得意」
- 「やってみないと分からない」
その人が「どうすればスムーズに学べるか」という特性を掴むことが、就職後の定着支援(マニュアル作りなど)に直結します。
② 興味・関心(動機づけ)
「楽しい」「好き」という感情は、働くための最強のエンジン(動機)です。
何に対して目が輝くのか、何なら頑張れるのか。その感覚的なポジティブ要素を大事に拾い上げてください。
まとめ:評価者ではなく、発見者になろう
行動観察とは、減点法で採点することではありません。
企業の基準という「ものさし」を持ちつつ、その人の中にある「将来性(芽生え)」と「輝くポイント(興味)」を発見する作業です。
「まだ無理」と決めつけず、「あと少しで芽が出そうだ」という温かくも客観的な視点で、利用者の背中を押していきましょう。
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