【保護者の悩み事例②】「誰にでも抱きつく」15歳。それは「愛着」か「性欲」か?

「15歳の息子が、男性・女性問わず抱きついてしまう」
「今は許されても、大人になったら犯罪になるのでは…」
前回の「服を脱いでしまう」事例に続き、今回は知的障害とASD(自閉スペクトラム症)のある15歳の息子さんを持つお母様(板谷さん)の悩みを取り上げます。
「過度な密着(抱きつき)」という、多くの事業所で起きているトラブルの背景と、性教育のあり方について考えます。
この記事は、スペシャルラーニングのSL65から抜粋して作成しています。
講師は、合同会社ヨルミナ代表の坂爪 真吾先生(前 一般社団法人ホワイトハンズ代表理事)です。
1. 抱きつく相手を選んでいる?「こだわり」の正体
板谷さんの息子さんは、誰彼構わず抱きつくわけではありません。
「体格のいい人」など、本人なりの「グッとくるポイント」がある人に抱きついています。
また、対象は異性(女性)だけでなく、同性(男性)の場合もあります。
ここから見えてくること
- 「性別」よりも「感覚」:
異性への性的欲求というよりは、「抱き心地が良い」「安心する」といった感覚的な充足(愛着や安心感)を求めている可能性が高いです。 - 背景を探る重要性:
「どんな時に」「どんな人に」抱きつくのかを観察することで、その行動が「性欲」なのか「不安解消(愛着)」なのか、背景が見えてきます。
2. 「愛着」だから許される?15歳のリアル
専門家の坂爪さんは、「愛着と性的欲求は絡み合っているもので、スパッと分けるのは難しい」と指摘します。
しかし、動機が純粋な愛着であったとしても、現実はシビアです。
- 相手への恐怖:15歳の身体の大きな男性に急に抱きつかれたら、相手(特に女性や子供)は恐怖を感じます。
- 社会的なリスク:大人になれば、痴漢や強制わいせつとして通報されるリスクがあります。
「障害があるから」「悪気はないから」では済まされない年齢に差し掛かっていることを、支援者も保護者も直視する必要があります。
3. 素晴らしい取り組み:ルールを決めた性教育
板谷さんの事例で特筆すべきは、ご家庭で早期から性教育(ルール作り)を徹底されている点です。
- 「触っていい場所」を決める:
「この部屋なら性器を触ってもいい(自慰をしていい)」が、「リビングではダメ」と具体的に教えています。 - 事前の許可:
人に触れる時は、いきなりではなく「触っていい?」と聞く、などの手順を教えています。
自慰行為自体は「悪」ではありません。「人前でやらない」というマナー(TPO)を教えることこそが、障害のある子への性教育の本質です。

4. 「18歳の壁」と孤立問題
横山さんの事例同様、板谷さんも「18歳(高校卒業)以降」の居場所を心配されています。
学校や放デイを卒業すると、人間関係が「家と作業所の往復」だけになりがちです。
- 出会いの場の欠如:
健常者なら自然にある「出会い」や「仲間作り」の場が、障害者には圧倒的に不足しています。 - 支援の必要性:
卒業後も、同世代の障害のある仲間とつながれるコミュニティや、安心して過ごせる居場所(サードプレイス)をどう確保するかが、彼らのQOL(生活の質)を左右します。
まとめ:性教育は「自分と相手を守る」ために
「抱きつく」という行為は、本人なりのコミュニケーションかもしれません。
しかし、それが相手を怖がらせたり、自分を犯罪者にしてしまう可能性があるなら、別の方法(握手や言葉など)に置き換えていく支援が必要です。
板谷さんのように、家庭と事業所が連携して「ここならOK、ここはNG」という明確なルールを伝え続けることが、彼らが社会で生きていくための命綱となります。
障害福祉の研修動画サービス「スペシャルラーニング」では、
- 「抱きつき・距離感の近さ」を修正するソーシャルスキルトレーニング(SST)
- 性的な行動と愛着行動を見分けるアセスメントシート
- 卒業後の居場所づくり・余暇支援の事例紹介
など、思春期特有の対人トラブルへの介入方法や、将来を見据えた支援のあり方を動画で配信しています。
本人も周りも傷つかない関係性を作るために。ぜひご活用ください。
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