【放デイ事例】「それはトラブルではなく日常」20代男性職員が見る、障害児の“性”と“羞恥心”の壁

「利用者が人前で服を脱ぐ」「異性に抱きつく」
これらを「性のトラブル」と捉え、頭を抱える現場は少なくありません。

しかし、現場の最前線で働く職員の中には、少し違った視点を持っている方もいます。
今回は、地方都市の放課後等デイサービス(放デイ)に勤務する20代男性職員・松下さん(仮名)へのインタビューから、「性の意識」と「羞恥心(しゅうちしん)」の育て方について考えます。

この記事は、スペシャルラーニングのSL65から抜粋して作成しています。

講師は、合同会社ヨルミナ代表の坂爪 真吾先生(前 一般社団法人ホワイトハンズ代表理事)です。

1. 「トラブル」ではなく「障害特性」である

松下さんの第一声は意外なものでした。
「これって本になるようなテーマなんですか? 日常的なことですよね?」

利用者と年齢が近い彼は、現場で起きる性の問題とされる行動について、非常に冷静な視点を持っています。

「性への意識」がないまま体だけが大人になる

松下さんは、多くの事案は「性的な意図」があるわけではなく、以下の2つのズレから生じていると分析します。

  1. TPOの欠如
    「ここでは脱いではいけない」という場所の理解(障害特性)ができていないだけ。
  2. 意識と身体のギャップ
    本人には全く性的な意識がない(子どもである)が、身体は第二次性徴を迎え大人になっている。

その結果、客観的に見ると「性的な問題行動」として映ってしまうのです。職員としては「目くじらを立てるトラブル」ではなく、「特性への支援が必要な日常」と捉える姿勢が印象的です。

2. 「羞恥心(恥ずかしいという気持ち)」は教えられるか?

性の問題で壁となるのが、「羞恥心(しゅうちしん)」の欠如です。
中学生になっても人前で平気で服を脱いでしまう利用者に、「恥ずかしいからやめなさい」と注意しても、なかなか伝わりません。

羞恥心は「上から目線」では育たない

そもそも、私たち(健常者)はどのように羞恥心を身につけたのでしょうか?
誰かに「恥を知れ」と教わったわけではありません。

  • 友達との関係の中で、「あ、これはみんな恥ずかしいと思っているんだ」と気づく。
  • 周囲の空気を感じて、自然と身につけていく。

つまり、羞恥心とは「横の関係(同年代)」の中で育まれるものであり、先生や親が上から言葉で教えて身につくものではないのです。

3. 親離れできない環境と「ピア(仲間)」の重要性

障害のあるお子さんの場合、どうしても親御さんの保護(干渉)が長期間続き、いつまでも「子ども扱い」されてしまう傾向があります。
親との密着度が高すぎると、自立した価値観や、同年代の中での「恥じらい」が育つ機会が失われてしまいます。

放デイこそが「学びの場」になる

だからこそ、家庭以外で同年代が集まる「放課後等デイサービス」の役割が重要になります。

  • ピア・エデュケーション(仲間同士の学び)
    「みんなはどう思う?」「〇〇くんは、それは恥ずかしいって言ってるよ」と、仲間同士で議論し、共有する。

先生が一方的に教えるのではなく、「同級生のみんなが恥ずかしいと思っているなら、やめておこう」と本人が気づけるような、集団の中での働きかけ(ピアの力)こそが、羞恥心を育てる鍵となります。

まとめ:閉鎖的な空間を開き、仲間と育ち合う

放デイは、単なる預かりの場ではありません。
家庭や学校では作れない「ナナメの関係」「横の関係」の中で、社会性や性のルールを学ぶ「社会の縮図」になり得ます。

「トラブルだ」と蓋をするのではなく、その場を「みんなで考える教育のチャンス」に変えていく視点が、現場には求められています。

障害福祉の研修動画サービス「スペシャルラーニング」では、

  • 同年代の集団療育で進める「SST(ソーシャルスキルトレーニング)」の実践例
  • 「プライベートゾーン」や「羞恥心」を仲間同士で学ぶワークショップ手法
  • 親離れ・子離れを促すための保護者支援のポイント

など、職員個人のスキルだけでなく、集団の力を使って利用者の成長を促すためのノウハウを動画で配信しています。
「日常」の中に学びの種を見つけるために。ぜひご活用ください。

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