【障害福祉のチームマネジメント事例】停滞したチームをどう動かす?「タスクフォース」で挑む入浴支援改革

「人間関係は悪くないけれど、なんとなく停滞している」
「新しいことに挑戦する空気がなくなっている」
チームが成熟期を過ぎると、こうした「マンネリ化(停滞)」が起こりがちです。
今回は、身体機能が低下した利用者への入浴支援を見直すプロジェクト(タスクフォース)を通じて、停滞したチームを再活性化させ、「学習する組織」へと変貌させた管理者の成功事例を紹介します。
この記事は、スペシャルラーニングのSL97から抜粋して作成しています。
講師は、厚生労働省 社会保障審議会 介護給付費分科会 介護報酬改定検証・研究委員会委員であり、日本社会事業大学専門職大学院教授の井上 由起子(いのうえ ゆきこ)先生と元厚生労働省 障害福祉課・虐待防止専門官であり、日本社会事業大学 社会事業研究所 客員教授の曽根 直樹(そね なおき)先生です。
1. 課題:安易な「機械浴」への依存
ある生活介護事業所での出来事です。
チームの人間関係は良好でしたが、「支援を良くしよう」という意欲が薄れ、停滞ムードが漂っていました。
- 現状:ストレッチャー浴(機械浴)と、リフト付き個別浴槽(家庭用に近いお風呂)の2種類がある。
- 問題:本来ならリフト浴に入れる身体機能がある人でも、手間のかからない機械浴で済ませるケースが常態化していた。
そこで管理者は、「本人の希望を聞き、可能な限りリフト浴へ移行する」という目標を立て、改革に乗り出しました。

2. 戦略:「タスクフォース」の結成と慎重な準備
日常業務の中で漫然と進めるのではなく、あえて「タスクフォース(特別チーム)」を結成しました。
- メンバー選定:管理者、リーダー的存在の職員2名、看護師。(成功させるために意図的に選抜)
- リスク管理:
- 看護師が中心となり、静水圧による心肺への負担をチェック。
- アセスメントシートを作成し、対象者を慎重に選定(8名中5名が対応可能と判断)。
- 本人・家族への説明と合意形成。
いきなり全員でやるのではなく、「成功確率の高いメンバーと利用者」から始めることで、失敗のリスクを最小限に抑えました。
3. リーダーの役割:責任は自分が、手柄は部下が
いざ実践という段階での、管理者の立ち振る舞いが秀逸です。
Step 1:最初のリスクはトップが負う
「誰が最初に入浴支援をするか?」という場面で、管理者は「経験10年の私がやる」と宣言。
最もリスクの低い利用者(Aさん)に対し、万が一トラブルが起きても責任を取れる管理者が最初に手本を見せました。
Step 2:安全を確認したら「一歩引く」
管理者が実践し、手順を修正した後、リーダー職員へバトンタッチ。
「私が全部やる」のではなく、「リーダー職員が他のスタッフに教える」という形を作り、自分は黒子に徹しました。
Step 3:安心してチャレンジできる環境作り
- 看護師から「緊急時の対応」を明確に指示。
- 「教わった通りにやれば大丈夫」というお膳立て。
これにより、現場職員は「安心して新しいことにチャレンジできる状態」になりました。
4. 成果:事務室での会話が変わった
この取り組みの結果、単に入浴方法が変わっただけでなく、チーム全体に劇的な変化が生まれました。
- 技術の伝承:スタッフからスタッフへ教え合う文化が生まれた。
- 会話の質の変化:休憩中に「Bさんの入浴、ここが難しかった」「Cさんの時はこうだった」と、支援に関する具体的な議論(押し合い)が自然発生するようになった。
これは、前回の講義で学んだ「チーミングの4要素(率直な意見、協働、試み、省察)」が現場に定着した証拠です。
まとめ:小さな成功体験がチームを変える
停滞したチームを動かすには、漠然と「頑張ろう」と言うだけでは不十分です。
- 明確な目標を持つ「タスクフォース」を作る。
- リーダーが最初の「リスク(毒見)」を引き受ける。
- 安全が確認できたら権限を委譲し、「成功体験」をスタッフに積ませる。
このプロセスを経ることで、チームは再び「学習する組織」へと進化します。
「最近、現場に活気がないな」と感じたら、まずは小さなプロジェクトチームを立ち上げ、具体的な「成功」を一つ作ってみてはいかがでしょうか。
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