【障害福祉のチームマネジメント事例】「日中」と「夜間」で分断される支援。利用者をチームの中心に置く意味

「日中の様子」と「夜間の様子」。一人の利用者の中に混在する2つの時間を、支援者同士はどれだけ共有できているでしょうか?

今回は、グループホーム(夜間)と日中活動事業所(昼間)の連携不足に関する事例を通して、 「チームの範囲はどこまで広げるべきか?」 そして 「利用者はチームの一員なのか?」 という本質的な問いについて考えます。

この記事は、スペシャルラーニングのSL93から抜粋して作成しています。
講師は、厚生労働省 社会保障審議会 介護給付費分科会 介護報酬改定検証・研究委員会委員であり、日本社会事業大学専門職大学院教授の井上 由起子(いのうえ ゆきこ)先生と元厚生労働省 障害福祉課・虐待防止専門官であり、日本社会事業大学 社会事業研究所 客員教授の曽根 直樹(そね なおき)先生です。

1. 事例:情報が共有されない「見えない壁」

あるグループホーム職員の方から、次のような事例が寄せられました。

  • 夜間のグループホームでの様子:利用者が「食事が喉を通らない」「夜眠れずにイライラしている」といった不調を抱えている。
  • 日中活動(生活介護・就労B型)でのトラブル:寝不足や空腹で体調が悪いまま通所するため、作業中にイライラしてトラブルを起こしてしまう。

ここで起きている問題

グループホームでの「眠れていない・食べられていない」という情報が、日中活動の事業所に共有されていません。

その結果、日中の職員は背景事情(体調不良)を知らないため、「なぜこの人は急に怒り出すんだ?」「困った人だ」と、 行動だけを見て利用者を非難したり、誤解したりしてしまう のです。

2. チームの境界線を「事業所」で引かない

この事例の解決策は、 「チームの境界線」を引き直すこと です。

  • 悪い例:「グループホームはグループホームのチーム」「日中活動は日中活動のチーム」と、事業所ごとに壁を作ってしまう。
  • 良い例:「利用者の1日(24時間)を支えるための1つのチーム」と考え、事業所の垣根を越えて連携する。

「昨夜は眠れていません」という情報が一つあるだけで、日中の職員は「今日は無理させずに休ませよう」と対応を変えることができます。逆に、日中の出来事を夜間にフィードバックすることも同様に重要です。

3. 究極の問い:利用者はチームの「メンバー」か?

チームの定義において、「構成員(メンバー)の境界」は重要です。では、 支援を受ける「利用者本人」はチームの一員でしょうか?

講師の曽根氏は、 「利用者はチームの一員であり、かつ『中心』である」 と断言します。

  • 目的の共有:チームの定義である「達成すべき目標」とは、 「利用者が望む生活の実現」 です。
  • 羅針盤としての役割:本人の意思や願い(どう生きたいか)が不在のまま、支援者だけで「あれがいい、これがいい」と話し合っても、それは 「支援者のための支援」 になってしまいます。

利用者は、チームが進むべき方向を指し示す 「羅針盤(コンパス)」 です。

「利用者を中心」に据えて初めて、グループホームも日中活動も、同じ方向を向いた「一つのチーム」になれるのです。

まとめ:その支援に「本人」はいますか?

チームマネジメントというと、つい「職員同士の連携」ばかりに目が行きがちです。

しかし、本当のチーム作りは、 「真ん中に利用者を置くこと」 から始まります。

「私たち(支援者)とあの人(利用者)」と分けるのではなく、「あの人の願いを叶えるための私たち(本人+支援者)」という広い枠組みでチームを捉え直してみましょう。

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