【障害福祉のチームマネジメント事例】新人職員の大失敗。なぜ先輩は「怒る」のではなく「謝った」のか?

新人職員にとって、医療職や経験豊富な先輩がいる現場は緊張の連続です。「わからないことがわからない」「怖くて聞けない」。そんな状況が、時には大きな事故につながることがあります。

今回は、ある生活介護事業所で起きた「救急搬送事例」をもとに、チームが危機(混乱期)を乗り越え、本当の信頼関係を築くためのリーダーシップについて解説します。

この記事は、スペシャルラーニングのSL93から抜粋して作成しています。
講師は、厚生労働省 社会保障審議会 介護給付費分科会 介護報酬改定検証・研究委員会委員であり、日本社会事業大学専門職大学院教授の井上 由起子(いのうえ ゆきこ)先生と元厚生労働省 障害福祉課・虐待防止専門官であり、日本社会事業大学 社会事業研究所 客員教授の曽根 直樹(そね なおき)先生です。

1. 医療職への気後れと「言われたまま」の行動

ある新人職員さんの事例です。

初めての生活介護勤務で、右も左も分からない状態。特に看護師やベテラン職員に対しては、「知識もスキルも違う」と気後れしてしまい、どう関わればいいのか分からないまま過ごしていました。

そんなある日、事件は起きます。

  • 自宅での転倒:高齢の利用者が自宅で転倒。
  • 家族の依頼:「歩けなくなったので車椅子で送迎してほしい」と言われ、新人は確認せずにその通りに対応。
  • 看護師の発見:施設到着後、利用者の顔色が悪いことに看護師が気づく。「なぜこの状態で連れてきたのか!」と激怒。
  • 結果:利用者は障害ゆえに痛みを訴えられなかったが、実は重傷で、即座に救急搬送となった。

新人職員は「言われた通りにしただけなのに…」という思いと、「取り返しのつかないことをした」という後悔で押しつぶされそうになりました。

2. チームを変えた「先輩の一言」

通常であれば、「なぜ確認しなかったんだ!」「報告連絡相談がなっていない!」と新人個人が責められる場面です。もしそうなっていれば、この新人は自信を喪失し、辞めていたかもしれません。

しかし、このチームの対応は違いました。

上司、看護師、先輩たちが集まり、新人にこう言ったのです。

「私たちがちゃんと指導していなかったのが悪かったね。ごめんなさい」

この言葉を聞いて初めて、新人職員は「だって教えてくれなかったじゃないですか」という反発心を持つことなく、素直に「利用者さんに申し訳なかった」と心から反省することができました。

それ以降、この新人は小さなことでもすぐに相談できるようになり、チームは大きく成長しました。

3. 「形成期」から「混乱期」を乗り越えるカギ

この事例をチームビルディングの視点で分析してみましょう。

① 事故前:形成期(遠慮と依存)

新人は看護師や先輩に遠慮し、「言われたことをやるだけ」の状態でした。これはチームとして機能していない「形成期」の特徴です。

② 事故発生:混乱期(危機と葛藤)

重大なミスが発生し、チームに緊張が走りました。ここでどう対応するかが分岐点でした。

  • 悪い対応:個人を攻撃する。「お前が悪い」→ 新人は萎縮するか反発し、チームは崩壊。
  • 良い対応(今回):システムの問題と捉える。「指導不足だった我々の責任」→ 新人は心理的安全性を感じ、失敗から学ぶ。

4. 「指導不足」を認める勇気

先輩たちにも「もっと確認してよ」と言いたい気持ちはあったはずです。しかし、そこで感情をぶつけず、「なぜ新人は確認できなかったのか?(=関係性が作れていなかったからだ)」と自責で捉えられたことが勝因です。

「怒る」のではなく「共に責任を負う」。

この姿勢が、遠慮がちだった「グループ」を、互いに信頼し合える「チーム」へと進化させました。

まとめ:ミスはチームを強くするチャンス

新人職員のミスは、実は「指導体制の穴」や「話しにくい雰囲気」を教えてくれるシグナルでもあります。

何かトラブルが起きた時、犯人探しをするのではなく、「報告しやすい環境だったか?」「指導は十分だったか?」とチーム全体で振り返ることができるか。それが、強いチームを作る分かれ道です。

障害福祉の研修動画サービス「スペシャルラーニング」 では、

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