【実録・権利擁護】なぜ「檻の中の障害者」を即時保護できなかったのか?三田市監禁事件が突きつける「判断を狂わせるノイズ」の正体

【実録・権利擁護】なぜ「檻の中の障害者」を即時保護できなかったのか?三田市監禁事件が突きつける「判断を狂わせるノイズ」の正体

2018年4月、兵庫県三田市で衝撃的なニュースが報じられました。
知的障害のある42歳の男性が、20年以上にわたり自宅の敷地内にあるプレハブ小屋の「檻(おり)」に監禁されていた事件です。

この事件の恐ろしさは、単に監禁の事実だけではありません。
実は、行政職員が檻を発見していながら、即時の保護や警察への通報ができなかった(遅れた)という点に、私たち支援者が学ぶべき重い教訓が隠されています。

今回は、三田市障害者虐待対応検証委員会の委員長を務めた谷口大二教授(関西福祉大学)の解説をもとに、専門職の判断を狂わせる「ノイズ」の正体について考えます。

この記事は、スペシャルラーニングのSL157から抜粋して作成しています。

講師は、元独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園の研究部長であり、特定非営利活動法人PDDサポートセンター グリーンフォーレストの理事長の志賀 利一(しが としかず)先生関西福祉大学社会福祉学部教授の谷口 泰司(たにぐち たいじ)先生です。

事件の概要:20年以上の監禁はなぜ発覚したか

被害者は、重度の知的障害がある男性。
高さ1メートル、広さ1畳ほどの木製の檻に入れられ、20年以上もの間、生活を強いられていました。

発覚のきっかけは、同居する母親が末期がんで入院し、退院に向けたカンファレンスが行われた際のことです。
父親が「息子は座敷牢に入れている」と発言したことから、市の職員が自宅を訪問し、事態が明らかになりました。

保護まで6日、通報まで1ヶ月。「躊躇」を生んだ3つのノイズ

檻に人間を閉じ込めることは、明らかに虐待であり犯罪です。通常であれば、発見と同時に速やかに保護し、警察へ通報すべき案件です。

しかし実際には、行政が通報を受理してから保護までに6日間、さらに警察への通報までには1ヶ月以上もの時間を要しました。

なぜ、目の前の惨状を見て、専門職は即決できなかったのか。
谷口教授は、そこには判断を鈍らせる「大きなノイズ」が混入していたと指摘します。

ノイズ①:余命わずかな母親の存在
発見当日、現場には余命1週間と宣告された母親がいました。「今ここで息子を連れ去ってしまっていいのか?」という同情が生まれました。

ノイズ②:協力的で丁寧な家族
父親は行政の立ち入りを拒まず、非常に協力的でした。「こんなに良い家族を犯罪者扱い(通報)していいのか?」というためらいが生じました。

ノイズ③:整えられた外見
被害者の男性は、髪や爪が綺麗に切り揃えられ、お風呂にも入っていました。いわゆる「ネグレクト(放置)」のイメージとは程遠く、「家族なりに大切にしているのでは?」という誤認を招きました。

最大の過ちは「家族中心」の視点になってしまったこと

この事例の最大の問題点は、「檻に入れられた本人」と「余命わずかな母親(家族)」という、利益が完全に相反する状況において、担当者が両方の事情を考慮してしまったことにあります。

「家族の視点」に立てば、保護を遅らせた理由はすべて説明がつきます。
しかし、虐待対応において最優先されるべきは、あくまで「本人の安全と権利」です。

本来であれば、家族支援と本人保護の担当を分けるなどの措置が必要でしたが、情に流され、対応がブレてしまったのです。

30年前から「知っていた」。根底にある「家族責任論」

さらに調査を進めると、根深い問題が明らかになりました。
実は、この一家が転入してきた平成3年の時点で、市の担当者は「閉じ込めている」「外から鍵をかけている」という記録を残していたのです。

なぜ、30年前に保護しなかったのか?

それは当時、「障害者の面倒は家族が見るのが当たり前」「暴れるなら閉じ込めるのも仕方ない(私宅監置の名残)」という価値観が社会全体に根強かったからです。
これを「家族責任論」と言います。

法律は変わりましたが、人々の意識や地域の空気感の中に、古い価値観が残り続けていたことが、20年以上の監禁を許してしまった真の要因と言えます。

まとめ:同情は時に、虐待を隠蔽する

「ご家族も一生懸命だから…」
「高齢で大変そうだから…」

私たち支援者は、つい家族の事情に同情し、利用者本人が受けている不利益(権利侵害)に目をつぶってしまうことはないでしょうか。
三田市の事件は、決して特異な例ではありません。「良い人そうに見える家族」の中にこそ、発見しにくい虐待が潜んでいる可能性があります。

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  • 虐待発見時の初期対応と通報の判断基準
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